ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

第36期棋王戦五番勝負

 第36期棋王戦五番勝負が2月6日から開幕するが、週刊将棋の今週号に戸辺誠六段と佐藤天彦五段の展望対談が掲載されており、なかなか鋭い分析で大変興味深く読ませていただいたのでこのブログに抜粋して記録にとどめることとした。
:対戦者同士の将棋の相性について
佐藤「棋風的に渡辺さんは久保さんに相性が良くないと思います。渡辺さんの対振り飛車の作戦は自陣を固めて、軽い攻めで勝つということが多い。ただ、久保さんは中、終盤の競り合いにも強い。渡辺流の攻めにもキッチリ対応している印象です。」
戸辺振り飛車党には結構大ざっぱな人が多いんですよ。ただ、久保さんは中、終盤の読みも正確で、振り飛車党っぽくないですね。多分、居飛車も指せると思います。」
佐藤振り飛車党は流れ重視な部分があると思うんですけど、久保さんは流れではなく、点で読める。振り飛車党では珍しい人。渡辺さんとしても終盤で逆転しにくい相手だと思います。」
:五番勝負で登場する戦型は?まずは久保棋王が先手の場合は。
戸辺「久保さんが自信を持っている石田流でしょう。いろいろな工夫が出ていて一番面白い戦型だと思います。」
佐藤「石田流は変化のバリエーションが多くて、シラミ潰しに調べるのは大変」
戸辺「▲76歩△84歩▲56歩からの中飛車も有力。」
佐藤「初手56歩からの中飛車なら、後手番の渡辺さんが相振り飛車を選択する可能性があります。」
:久保さんが後手番のときは?
佐藤ゴキゲン中飛車でしょう。竜王は先日の朝日杯では▲37銀からの急戦を指しましたが、自陣が固くないので、竜王の好みではない。58金右急戦でつぶしたいと考えていると思います。▲76歩△34歩▲68玉のゴキゲン封じを指す可能性は低いのでは」
戸辺「久保さんは作戦の引き出しが多いから、ゴキゲン封じは渡辺さんの方が嫌かも」
佐藤居飛車党は相居飛車の研究が忙しくて、対振り飛車まで手が回らない。ゴキゲン中飛車にしても、石田流にしても結論が日々変わるので、居飛車党からすると研究不足の状態で指す怖さがある。」
:将棋の展開は?
戸辺「対抗形の将棋で、序盤で久保さんが新構想を出して、渡辺さんが対応するということが多いと思う。」
佐藤「研究量などで久保さんが序盤で悪くなることはないと思います。」
戸辺「中、終盤は競り合うと思います。攻めがつながるか、寄るかどうかの。最後まで大差にならない」
:勝敗予想は?
戸辺「いつも、どちらが勝つだろうと予想するんですけど、今回は想像できません」
佐藤「フルセットまでいくでしょう」
:五番勝負の注目点は?
戸辺「私は振り飛車党なので、久保さんが勝てば、ゴキゲン中飛車や石田流の流行がまだまだ続くと思う。今回の5番勝負で対策の決定版みたいなものが出るとつらい。」
佐藤「序盤も注目ですが、中、終盤のギリギリの競り合いが楽しみですね」
 以上、対談日23年1月21日
 いずれかのストレートで終わるとはとても考えにくいと思う。第4局は関西将棋会館。同会館で大盤解説会があれば見学に行ってみたいと思っています。