ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

ドキュメント竜王戦

 1月29日、長崎市は朝から小雪が舞う寒い一日だった。NHKの衛星放送の契約をしていない私はこの日、BS2で再放送される「ドキュメント竜王戦」(渡辺明羽生善治死闘再び!)を見たいがためにネットカフエへ行った。11時半、4時間パックのリクライニング席へ入室。前座?として、久しぶりに囲碁将棋ジャーナルをみた。将棋棋譜は37期女流名人位戦第1局(里見vs清水)を里見3冠の師匠の森九段が楽しそうに解説していた。
 さて、本題の竜王戦は13時半から15時までの放送時間である。6局までをダイジェスト風に構成されており、それぞれ初代竜王の島九段が両者にインタビューする形式で一局ごとの締めに登場する。
 第1局は私の住む長崎市が対局場。私は前夜祭から大盤解説会まで三日間通った。検分の日、相手の将棋をどう見ているか?好きな駒は?など聞かれての渡辺竜王「割り切りが早く、見通しの立て方が明るい。どこまでいっても何かあるんではないかという怖さがある。好きな駒は飛車。」羽生名人「全体的に隙がない将棋。好きな駒は銀。」将棋の方は終局時も大盤解説会場にいたが、夕方あっという間に終わって困惑したのを覚えているが、渡辺竜王の語りで納得がいった。「羽生さんが56同香と指して、一瞬顔を覆った。そこでこれは錯覚だなと気付いた。」56同金と指すと羽生さんは投了した。将棋というのは読みを競い合うばかりでなく、相手の顔色・しぐさなども闘いの要素になるのだなとあらためて思いました。
 第2局は福島市。矢倉戦となる。羽生名人の59手目15香が新手。渡辺竜王が74手目96歩で反撃開始。142手目62角で羽生投了。島九段の談「羽生名人が4連敗で負けると世代交代が進む。負けてはいけないという気持ちを長く持ち続けている棋士であり、羽生さんにとってはこれまでにない試練となる。」
 第3局は北海道・十勝川。前夜祭での羽生名人の挨拶「40歳になって、10年後でも記憶に残る戦いをしたい」渡辺竜王はずっと勝ちだと内心思っていた過程での93手目78銀で、羽生名人は残り時間33分のうち、20分使って94手目75金と指し、この一歩の補充が羽生の命を結果的につないだ。渡辺竜王は75金には結構びっくりしたとのことだったが、将棋は羽生の124手目、61香で勝負は決まった。終局後の羽生さんの「内容が伴っていない」の言葉も印象的だった。
 第4局は加古川市。私が前夜祭、大盤解説会と行ったので印象に残っている対局の一つ。角換わり腰掛け銀。47手目羽生名人の35歩が意外。渡辺竜王は35歩が自らにとって薄い研究の範疇だったとのことで46歩と指す。79手目27飛、80手目35銀打で次25歩を予想したが、羽生名人の着手は33歩成だった。ここでは読み負けていると渡辺竜王は自覚。羽生名人の読みの深さを痛感したとのこと。123手目、羽生名人の手が震え、139手84銀で後手投了となる。最後の最後まで、きわどかったと羽生名人の談。さて、この対局で記録係りを務めた船江恒平四段と共に映っていたバックの屏風?の何と絵になることよ。放送の冒頭にも流れていたぐらいの映像シーンだ。私は初日の午後に五分間ほど、対局観戦したがこの裏側から観戦していたから気付かなかった。この絵になる模様は王将戦第4局でも見ることができるだろうか、王将戦はBS中継がなかったですね。残念です。
 第5局は加賀温泉。渡辺竜王の33歩成の局面で羽生名人ははっきり駄目だと思ったらしいが、104手目42角打ちから状況は一転する。つかみどころのない局面が延々と続く。3分という渡辺竜王の残り持ち時間の使い方がリアルに迫ってくる。135手目から12手連続、1分未満で渡辺竜王は指し続ける。148手目24角右、このとき均衡が崩れ、この決断が竜王戦の命運を分けた。155手目3分のうち、2分を使って51角と打った。
 第6局は岐阜県高山市。ナレーションの言葉「天才の指し手が、もう一人の天才を悩ませる。渡辺の新手が功を奏し、羽生を窮地に追い込んでいた。162手目33同玉が、最後の一手だった。羽生は2年前に続き、またしても永世7冠に手が届かなかった。」
 ラストシーンは年が明けて千駄ヶ谷将棋会館での指し初め式。渡辺竜王が小学生と指し初め式のシーン。<プロを志したあの時の自分が目の前にいた>とアナウンス。まるで、映画のラストシーンであるかのような演出であった。
本日の詰将棋:5手詰