ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

第63期王将戦第4局

王将戦初防衛に渡辺明王将が王手とするか、羽生善治三冠がタイに持ち込むか注目の第4局が2月18,19日に青森県弘前市で開催された。

後手の渡辺王将が採った作戦はごきげん中飛車である。彼にとっては、タイトル戦上、初めての振り飛車であった。

実はこれには伏線がある。2月14日におこなわれた第55期王位戦リーグ(白)において、佐藤康光九段と対戦し、後手番の渡辺王将はやはりゴキゲン中飛車を採用している。消化対局でもないのに、正直「あれっ」と思ったものである。結果は139手で佐藤九段が勝っている。

居飛車正統派の渡辺王将が重要な対局に連続して振り飛車を採用している。この現実をどう解釈すればよいのであろうか。昨年秋に、竜王位連覇を続けていたのが9連覇でストップした。年が明けて今年4月には30歳を迎える。ポスト羽生世代の筆頭候補として期待されている彼が将棋の戦術の幅を広げ、モデルチエンジを図っているのであろう。

王将戦第4局で立会人を務めた藤井九段もそこらへんのことを言っている。「渡辺王将は戦術の幅を広げようとしている。そのためには振り飛車の数をこなすべきでしょう」と。

渡辺王将は最初の頃、久保九段の振り飛車に苦戦したはずだ。やがて、その振り飛車を打破して、個人的にもその対戦成績において優位に立った。当然、振り飛車戦法の弱点、あるいは優秀性も知り尽くしている。もともと、細かい攻めをつないでいくのがうまい彼にとっては振り飛車戦法も相性がいいのではと個人的に思っている。今回、連続採用して結果は出なかったけれども、どうか番数をこなして自分の技として会得していただきたいものである。タイトル戦において、一つでも多くの振り飛車戦が観戦できる機会が増えると云うことは振り飛車党フアンとしても嬉しい限りである。