ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

先手56歩から中飛車VS振り飛車

 7月末の土日には私にとって注目すべき対局が2局あった。

一つは7月30日に開催されたJT将棋日本シリーズ2011で、もう一つは31日の夜に公開された大和証券杯ネット将棋・最強戦で対局者はいずれも久保2冠がらみの対局である。
左図がJT杯で先手が久保2冠、後手は深浦九段で40手目後手が85桂と跳ねた局面だが、この時点で先手は銀損であるが、64桂からうまく手を作り端を破って、105手で先手が勝利した。一方、右図は大和証券杯で先手が久保2冠、後手は村山慈明五段で62手目後手が25歩の合わせ歩からうまく手を作り、100手で後手が快勝している。久保2冠は相振り独特の左側の桂活用がままならず、力が出せずに終わった感が深い。
 さて、この2局に注目したいのは先手が56歩から中飛車を目指したのに対して、後手が取った作戦が振り飛車で応えた点にある。
 私はごきげん中飛車をよく指すが、相手が飛車を振らない人と分かっていても56歩から中飛車を目指すことはない。それは相振りに誘導されると中飛車側の指し方があまりうまくいったためしがないからである。
 ここに興味深いプロ将棋のデータがある。私が収集している標題の相振り飛車対局数が約120局ある。中飛車側から見て54勝66敗で5割に届いていない。久保2冠も5勝5敗の指しわけぐらいで、一番対局数が多い近藤六段が16勝13敗でよく健闘しているほうである。120局の対局者名を見てもそうなのだが、この2局のように深浦九段や村山五段のように日頃、振り飛車党でない人が参戦している点が相振り飛車の一形態としてこの戦法を見る場合、その解決や分析を解くヒントがありそうである。