ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

羽生vs渡辺「新ライバル戦記」(アサヒ芸能)

週刊誌のアサヒ芸能により、この3月の3週間にわたって、短期集中連載(上・中・下)と銘打って標記の記事が掲載された。

この週刊誌はちょっぴり大人向けの記事が多く、将棋用語でいえば搦め手からというか、裏データをバックに三面記事的に読者の興味をそそるような感じに仕上げることが多い。

将棋界の王道を突き進んでいる羽生、渡辺という二人をどういう切り口で料理するのか注目して読んでいたが、これがいたって真面目に且つポイントを押さえて「ライバルとして名勝負をくりひろげながら、今後も2強として君臨していくだろう」と結んでいる。

それでは、それぞれの号のハイライトを紹介していこう。

* 3月14日号(第21期竜王戦第7局)

あの3連敗してから4連勝した渡辺竜王の防衛戦。その歴史に残る名局の舞台裏が主な記事内容である。

図は羽生の23歩に渡辺42金と寄って、こらえたところである。ここで、▲62銀成としておけば、△53飛なら▲64金。△54飛には▲55金 △74飛 ▲64金で、次に飛車を取ればはっきり先手勝ちだったと渡辺も認めていた。実戦は62金以下展開し、情勢が渡辺に傾いていくことになったと解説している。

羽生義治vs渡辺明.kif 直

記事1:当時の米長会長はこの日対局場にかけつける予定だったが、羽生が永世7冠になれば政府から国民栄誉賞を贈られる可能性があることを知り、東京に残った。

記事2:羽生と渡辺の初対局は2003年3月の王位戦リーグ。渡辺が19歳になる1か月前であり、ここで渡辺は敗れるが半年後にリベンジのチャンス到来。千日手局を含めて6番戦った王座戦である。タイトル奪取はかなわなかったものの、羽生に初めて勝った第2局の夜は寝付けなかったと明かす一方、6局戦ったことに確かな手応えを感じることになる。


*3月21日号(第6回朝日杯オープン準決勝戦

図は平成25年2月9日におこなわれた朝日杯オープン戦の準決勝譜より49手目先手の羽生が35歩と指した局面である。
この手以降、形勢が渡辺に傾いた。44角の飛車と香取りを受けているが、それでも55角で香の両取りが残るからである。
局後の感想戦でも渡辺は「少しやれるかなと思った」と控えめだが、羽生は「はっきり悪くした」と敗勢を認めている。

羽生vs渡辺.kif 直

記事1:渡辺は羽生を負かすことに慣れてきたのではないか。対羽生通算成績が勝ち越しており、その実績に裏打ちされている。
記事2:二人の生き方の違いが浮き彫りにされたのが「棋士の名言100」(後藤元気著)。それによると、
  羽生「なんのために将棋を指すのかは、70歳になってから考えたい」
  渡辺「40歳で引退して好きなことをやる。そういう幸せがあってもいいと思う」
記事3:羽生の私生活はベールに包まれているが、渡辺は出来ちゃった婚から、オープンな家庭環境。渡辺家は村山六段や戸辺六段など若手棋士のたまり場になっている。


*3月28日号(第60期王座戦第4局・千日手局)

因縁の王座戦で繰り出した「羽生マジック」と副題が付いていた。

図は122手目に敗色濃厚だった羽生が歩の頭に銀をただ捨てした。これが指し直し局につながり、王座の復位となったと分析している。

渡辺明vs羽生義治.kif 直

記事1:獲得賞金・収入面で2人が群を抜いている。
記事2:渡辺の趣味は競馬(かなり詳しく紹介)。一方、羽生はチェス(昨年10月にフランス王者と対戦して引き分け、チェス一本に絞れば世界も狙えたとたたえられる。)
記事3:現在、名人位を除けば、2人で3冠づつ分け合っている。二強時代の激闘はこれからいよいよ本番を迎えるであろう。