全編、将棋の話しと思いきや、中身は前半が競馬で後半が将棋としっかり二つに分かれている。
著者を存じあげて無かったのでネットで調べてみたら、北海道在住のまま執筆活動をされた小説家で、2009年に逝去されている。
札幌在住時代の還暦近くに将棋を始められ、まず小樽商大将棋部の強豪、次に北大将棋部の強豪を師匠として迎えての、2年間近くの上達奮戦記である。
20年前の刊行物でもあるので、若干二十歳の先崎五段(当時)のNHK杯優勝時のエピソードや第29期王位戦(谷川王位vs森九段)の旭川対局の観戦記などもメインの読み物となっている。また、北海道だけに桜井亮治さんや新井田基信さんの名前も登場する。
さて、上達記だが大学生に指導をうけるが、2枚落からはじまり、逆に4枚落ち・6枚落ちに指し込まれるなど作者自身、悶々としているなかプロ棋士との指導対局の話しが持ち上がってくる。
当時、北海道新聞には「プロに挑戦、電話将棋道場」という年に一度の企画があった。今日でいうところのさしずめ「ネット将棋」というところであろう。
毎回3人のアマが登場して、プロからみればいわゆる3面指しである。3人は新聞社の札幌本社に赴き、プロは新聞社の東京支社に来る。電話にはスピーカーが接続してあり双方の指し手は東京・札幌の対局場に響き渡る仕掛けである。(そのほか、運営の詳細は省略する)
原田康子アマは青野照市八段より6枚落ちの指導対局を受ける。
さて、その棋譜は次のとおり。
42玉 76歩 72金 46歩 74歩 45歩 32玉 56歩 62銀 68銀 73金
57銀 42金 46銀 54歩 58飛 53銀 48玉 64金 38玉 65金 48銀 64銀
47銀 53金 36歩 84歩 37桂 85歩 78金 76金 77金 75金 96歩 42銀
66金 同金 同角 75歩 88角 86歩 同歩 76歩 66角 75金 39角 77歩成
同桂 76歩 75角 同銀 65桂 52金 55歩 77歩成 54歩 67と
53歩成 58と 52と 31銀 12金 24歩 13金 まで64手で原田アマの勝ち。
*左金を敵方攻めの金と交換を迫るタイミングに角切りの時機、それに飛車に当たるトキンに目もくれずに
小駒で攻め倒す迫力ある寄せ方など、学生強豪に4〜6枚落でアップアップしていた人と同一人物とは
とても思えないような指しっぷりである。
*女性で且つ六十の手習いで将棋に精進された姿に敬意を表して、この本を紹介いたしました。