ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

先手中飛車<角交換型>菅井竜也五段勝局集

菅井五段による菅井ノート(後手編)が昨年の秋に、同(先手編)が今年の1月にそれぞれ刊行された。

先手編では「石田流3間飛車」が主体となりつつ、先手中飛車<角交換型>も紹介されている。

中飛車の方は次の図のように7筋で銀交換にする指し方の研究がメインである。

研究テーマは本人の実戦例などを引用しつつ進められているが、その棋譜全てが紹介されているわけではない。

また、先手中飛車の指し方が全て参考図のようになるものではなくて、それは将棋というのは相手あってのものだからである。

そこで、菅井5段の実戦棋譜を10番ほど採り上げて、指し方の呼吸というものを味わいながら、この菅井ノートの理解の一助にしたい。

1 菅井五段vs松本佳介六段  71期C2順位戦

後手の布陣は63銀・64歩型のため、75銀とぶつける筋はない。そのかわり、本局では先手55飛から85飛と十字に捌いて、飛交換となっている。非常にアマ好みの捌きではあるが、俗に「捌けば捌かれる」というように、飛を手持ちにした場合、どちらが指しやすいかを常に念頭にいれておかなくてはならない。それではその実戦手順を見てみよう。
▲55飛 ▽33桂  ▲85飛 ▽同飛  ▲同桂 ▽36歩  ▲同歩 ▽45桂  ▲83角 ▽72角  ▲56角成 ▽54銀 
▲46歩 ▽37歩  ▲同桂 ▽同桂成 ▲同銀 ▽45歩  ▲55歩 ▽44桂  ▲38馬 ▽65銀  ▲同銀 ▽同歩  
▲64桂 ▽63角  ▲54銀 ▽同角   ▲同歩 ▽82飛  ▲63飛 ▽62金 ▲43飛成 ▽同玉 ▲71角 ▽92飛 
▲65馬 ▽33玉  ▲53歩成▽61金  ▲43金 ▽24玉  ▲44金 ▽71金   ▲34金 ▽同玉  ▲92馬 ▽同香
▲32飛  まで85手で先手の勝ち。
菅井vs松本.kif 直
2 菅井五段vs横山泰明五段  70期C2順位戦

菅井ノートでは6筋のお互いの歩越し銀の対抗型から先手75銀のぶっつけから本格的な戦闘が開始する。ところが、本局では途中図から65銀のぶっつけである。つくづく将棋の実戦とは活きものなのだなとの思いに至る。
▲65銀 ▽53銀  ▲55歩 ▽同歩  ▲同飛 ▽54歩  ▲59飛 ▽64歩  ▲56銀 ▽86歩  ▲同歩 ▽同飛  
▲66歩 ▽89角  ▲79金 ▽56角成 ▲同飛 ▽87飛成 ▲57飛 ▽33桂  ▲96角 ▽76龍  ▲68金 ▽74歩 
▲65歩 ▽73桂  ▲67金 ▽86龍  ▲64歩 ▽同銀  ▲63角 ▽66歩 ▲68金 ▽88龍  ▲69歩 ▽45桂 
▲54飛 ▽同銀  ▲同角成▽53銀打 ▲87馬 ▽89龍  ▲54歩 ▽62銀  ▲46歩 ▽67歩成 ▲同金 ▽47飛
▲78馬 ▽99龍  ▲45歩 ▽63銀  ▲36銀  まで87手で先手の勝ち。
菅井vs横山.kif 直
3 菅井五段vs村田顕弘五段  62期王将戦予選

さて本局は菅井ノートの研究テーマである75銀のぶっつけから本格的な闘いが始まる。本局はまた、菅井ノートの212ページと213ページに紹介されているので併行してご覧になるとよいだろう。
▲75銀 ▽同銀  ▲同歩 ▽64角  ▲66角 ▽86歩  ▲同歩 ▽同飛  ▲87歩 ▽82飛  ▲46銀 ▽52飛 
▲55歩 ▽33銀  ▲65桂 ▽62金 ▲54歩 ▽同銀  ▲53歩 ▽同金  ▲同桂成 ▽同飛 ▲55金 ▽同銀 
▲同銀 ▽同角  ▲同飛 ▽同飛  ▲同角 ▽57桂  ▲39金 ▽15歩 ▲同歩 ▽17歩  ▲同香 ▽16歩 
▲同香 ▽76飛  ▲46角▽25銀   ▲17銀 ▽78飛成 ▲82飛 ▽16銀  ▲同銀 ▽17歩  ▲同桂 ▽48金
▲同金 ▽同龍  ▲29金 ▽49桂成 ▲81飛成 ▽24歩 ▲14桂▽12玉   ▲57角打 まで89手で先手の勝ち。
菅井vs村田.kif 直
4 菅井五段vs畠山鎮七段  5期朝日杯

本局も75銀のぶっつけから戦いが始まり、先手37手目55歩の交換から飛車を41手目56飛と浮いた手に対して、後手は42手目69角と打ち込んできた。この69角の攻防の変化を実に詳しく菅井ノートでは紹介している。(171ページから181ページ)
▲75銀 ▽同銀  ▲同歩 ▽86歩  ▲同歩 ▽同飛  ▲87歩 ▽82飛  ▲55歩 ▽同歩  ▲同飛 ▽54歩 
▲56飛 ▽69角  ▲79銀 ▽88歩 ▲同金 ▽87角成 ▲84歩 ▽55歩  ▲66飛 ▽54馬  ▲86飛 ▽95銀
▲83歩成▽86銀  ▲82と ▽56歩  ▲83角 ▽51金  ▲56角成 ▽69飛 ▲46馬 ▽64馬  ▲同馬 ▽同歩 
▲68角 ▽77銀生 ▲同金▽55角   ▲56飛▽77角成  ▲同角 ▽79飛成 ▲51飛成▽41金打 ▲81龍 ▽77龍
▲55桂 ▽57桂  ▲43桂成 ▽同玉 ▲39金 ▽56桂  ▲54銀▽同玉   ▲55歩 ▽43玉  ▲54角 ▽33玉 
▲41龍 ▽同金  ▲43金 ▽22玉 ▲33銀  まで93手で先手の勝ち。
菅井vs畠山.kif 直
5 菅井五段vs及川拓馬四段  71期C2順位戦

本局のように55歩の交換から55角あるいは55飛と捌いていく指し方は古くは大野源一九段あたりの棋譜にも散見される。菅井ノートではこういう将棋を指したと云う紹介にとどまっている。(159ページ)
▲96歩 ▽87歩  ▲89歩 ▽75歩  ▲同歩 ▽64歩  ▲74歩 ▽58歩  ▲同金 ▽84飛  ▲72角 ▽53銀上 
▲48金 ▽92角  ▲36角成▽74飛 ▲47馬 ▽76歩  ▲74馬 ▽同角  ▲85桂 ▽同角  ▲45歩 ▽77歩成
▲同銀 ▽45桂  ▲46歩 ▽74角  ▲45歩 ▽35銀  ▲82飛 ▽46桂 ▲53飛成▽71角  ▲52飛成▽同金 
▲54龍 ▽53金  ▲59龍 ▽38桂成 ▲同金▽46銀出  ▲48銀 ▽57銀打  ▲56歩 ▽58歩 ▲49龍 ▽56角
▲57銀 ▽同銀成 ▲68銀 ▽59歩成 ▲57銀 ▽49と  ▲56銀 ▽52金  ▲54桂 ▽33銀  ▲25桂 ▽58飛 
▲47銀打▽78飛成 ▲31金 ▽同玉 ▲33桂成▽12飛  ▲79歩  まで101手で先手の勝ち。
菅井vs及川.kif 直
6 菅井五段vs佐々木勇気四段  70期C2順位戦

本局は後手の居飛車穴熊含みの指し方に対して、後手から角交換を誘うような先手23手目の57銀であった。77角成の角交換から桂頭の弱点をつくような75歩の突き捨てから86歩と後手の攻めをどのようにかわしながら反撃していくかが見どころである。
     ▽75歩  ▲同歩 ▽86歩   ▲同歩 ▽同飛  ▲38銀 ▽76歩  ▲65桂 ▽44銀  ▲74歩 ▽85飛 
▲96角 ▽83飛  ▲84歩 ▽同飛 ▲73歩成▽77歩成 ▲同金 ▽88飛成 ▲78金 ▽86龍  ▲63と ▽94歩 
▲66銀 ▽95歩  ▲87角 ▽83龍  ▲64と ▽86角  ▲54と ▽59角成 ▲同金 ▽86歩  ▲98角 ▽74飛 
▲61角 ▽93龍  ▲53桂成▽同金  ▲同と ▽同龍  ▲75歩 ▽71飛  ▲43角引成▽同龍 ▲同角成 ▽同玉
▲83飛 ▽53角  ▲55銀 ▽52歩   ▲54金 ▽32玉  ▲44銀 ▽75角  ▲49金 ▽22玉  ▲68金 ▽42歩 
▲72歩 ▽61飛  ▲85飛成 ▽93角打 ▲71歩成▽同飛  ▲76歩▽48角成  ▲82銀 ▽73桂  ▲83龍 ▽65桂
▲71銀生▽57桂成 ▲61飛 ▽32金  ▲84歩 まで101手で先手の勝ち。
菅井vs佐々木.kif 直
7 菅井五段vs中座真七段  19期銀河戦

本局は7筋で銀交換した後、後手の差し手が64角ではなくて、途中図のように24角と打って68あたりに銀を絡む指し方である。本局の中座戦をはじめ、詳しく菅井ノート(165ページから168ページ)に紹介されている。
▲25銀 ▽68銀 ▲89飛 ▽77銀成  ▲同金 ▽68角成  ▲66金 ▽43銀  ▲74歩 ▽33桂  ▲73歩成 ▽同桂 
▲74歩 ▽83飛  ▲14銀 ▽同香 ▲15歩 ▽同香  ▲同香 ▽16桂  ▲18玉 ▽17歩  ▲同桂 ▽13歩  
▲39金 ▽64歩  ▲29金 ▽65桂   ▲79角 ▽同馬  ▲同飛 ▽24角 ▲75飛 ▽15角  ▲73歩成 ▽28香 
▲19金 ▽45桂   ▲46角 ▽37桂成 ▲25桂 ▽24歩  ▲37角 ▽同角成  ▲同銀 ▽25歩  ▲83と ▽35角
▲26歩 ▽45桂 ▲28銀 ▽同桂成  ▲同金 ▽37銀   ▲38歩 ▽28銀成 ▲同玉 ▽26角  ▲24香 ▽33玉 
▲11角 ▽22銀  ▲同香成 ▽同金 ▲24銀 ▽同玉  ▲36桂 ▽33玉   ▲22角成▽同玉 ▲24香まで
105手で先手の勝ち。
菅井vs中座.kif 直
8 菅井五段vs森内俊之名人  6期朝日杯

本局は75銀のぶっつけではなくて89飛と廻り込み、玉の囲いも銀冠に組み替えていく戦い方である。
▲89飛 ▽74歩 ▲27銀 ▽72飛  ▲38金 ▽75歩  ▲同歩 ▽同銀  ▲83角 ▽73飛  ▲61角成 ▽76銀 
▲39飛 ▽64歩  ▲75歩 ▽83角 ▲52馬 ▽同銀  ▲84金 ▽43飛  ▲83金 ▽同飛  ▲55歩  ▽86歩 
▲同歩 ▽同飛  ▲62角 ▽58角 ▲87歩 ▽82飛  ▲44角成▽33金打 ▲45馬▽67銀成  ▲同金 ▽87飛成
▲59飛 ▽88龍  ▲68歩▽67角成 ▲同馬 ▽46歩  ▲同歩 ▽47歩  ▲37銀 ▽76歩  ▲同馬 ▽68龍
▲58飛 ▽79龍  ▲54歩 ▽65歩  ▲53歩成▽48金  ▲同金▽同歩成  ▲同銀 ▽47歩  ▲同銀 ▽66歩
▲42金 ▽39銀  ▲17玉 ▽41銀 ▲同金 ▽15歩  ▲同歩 ▽49龍  ▲65角 ▽54歩  ▲42と ▽58龍 
▲同銀 ▽55飛  ▲32と ▽同金 ▲38金 ▽48金  ▲54角まで113手で先手の勝ち。
菅井vs森内.kif 直
9 菅井五段vs村中秀史六段  19期銀河戦

本局は先手早々に振り穴に囲い、その代償として居飛車側に飛車先の歩交換を許すが先手側から角交換をして88飛とぶっつけて軽快に捌いていこうと云う指し方である。終盤後手の攻撃をかわしつつ、最後は先手入玉して勝っている。
     ▽86歩 ▲同歩 ▽同飛  ▲22角成 ▽同銀  ▲88飛 ▽87歩  ▲58飛 ▽74歩  ▲36歩 ▽73桂
▲96歩 ▽94歩  ▲16歩 ▽33銀 ▲35歩 ▽同歩  ▲34歩 ▽44銀  ▲46歩 ▽76飛  ▲66角 ▽47角 
▲45歩 ▽66飛  ▲同歩 ▽45銀  ▲81飛 ▽34銀  ▲91飛成▽15歩 ▲同歩 ▽17歩  ▲同香 ▽51銀 
▲82龍 ▽64角  ▲55歩 ▽33桂  ▲87龍 ▽58角成 ▲同金 ▽55角  ▲78角 ▽16歩   ▲同香 ▽25銀
▲34歩 ▽16銀  ▲33歩成▽同玉  ▲18香 ▽17歩  ▲同香▽同銀成  ▲同桂 ▽16香  ▲37歩 ▽18歩 
▲29玉▽17香成  ▲同銀 ▽15香 ▲16歩 ▽46桂  ▲48金寄▽66角  ▲18玉  ▽16香  ▲同銀 ▽17歩
▲同玉 ▽19飛  ▲26玉▽39飛成  ▲57金 ▽36金  ▲15玉▽57角成 ▲25桂 ▽44玉  ▲33銀 ▽53玉 
▲57龍 ▽32金上 ▲24香 ▽19龍  ▲14歩 ▽11香  ▲13香 ▽33金  ▲同桂成▽27金  ▲23香成▽17龍
▲24玉 ▽26龍 ▲25歩 ▽16龍  ▲11香成▽22歩   ▲同成香▽44銀  ▲23成桂▽42銀上 ▲13玉 ▽25龍 
▲46龍▽31銀打  ▲24歩 ▽22銀 ▲同玉 ▽14龍  ▲12成香▽45香  ▲76龍  まで135手で先手の勝ち。 
菅井vs村中.kif 直
10 菅井五段vs長岡裕也五段  20期銀河戦

本局は76歩 34歩 75歩の出だしだから先手としては石田流3間飛車を目指していたが、後手よりいきなり角交換されて本譜のようになってしまった。途中図は普通のごきげん中飛車みたいだが、75歩の位置が変わった序盤を暗示している。
▲77銀 ▽84飛 ▲76銀 ▽86飛  ▲87銀 ▽84飛  ▲77桂 ▽68角  ▲同金 ▽87飛成  ▲96角 ▽88龍 
▲78金 ▽82龍 ▲84歩 ▽同龍 ▲74歩 ▽33桂  ▲55歩 ▽同歩  ▲73歩成▽同龍   ▲89飛 ▽84歩 
▲66歩 ▽75龍 ▲76歩 ▽73龍  ▲67金 ▽94歩  ▲78角 ▽82龍 ▲68金 ▽44歩  ▲65歩▽53銀引 
▲66角 ▽45歩 ▲84飛 ▽83歩  ▲89飛 ▽54銀打 ▲86飛 ▽43金  ▲75歩 ▽14歩   ▲74歩 ▽22玉
▲76飛 ▽72歩 ▲86飛 ▽32金  ▲87角 ▽24歩  ▲16歩 ▽35歩  ▲67金 ▽44金   ▲48角 ▽73歩 
▲76飛 ▽74歩 ▲同飛 ▽43銀引 ▲76飛 ▽34金  ▲66金 ▽15歩  ▲同歩 ▽17歩   ▲同玉 ▽36歩 
▲同歩 ▽37歩 ▲同桂 ▽15香  ▲16歩 ▽同香  ▲同玉 ▽35歩 ▲67金 ▽46歩  ▲同飛 ▽44銀右 
▲17玉 ▽36歩 ▲同飛 ▽25桂  ▲28玉 ▽37桂成 ▲同銀 ▽25金  ▲76飛 ▽36歩   ▲同銀 ▽56桂
▲25銀 ▽同歩 ▲57角 ▽35歩  ▲56金 ▽67銀  ▲46金▽76銀成  ▲同角 ▽56歩   ▲同金 ▽52龍 
▲55歩 ▽31玉 ▲64歩 ▽26歩 ▲同歩 ▽64歩  ▲38金 ▽78飛  ▲85角 ▽36歩   ▲54香まで147手で先手の勝ち。 
菅井vs長岡.kif 直

◎ 以下の実戦例は棋譜の紹介のみにとどめる。(棋譜フアイルにて)
11 菅井五段vs牧野光則四段  69期C2順位戦
菅井vs牧野.kif 直
12 菅井五段vs畠山成幸七段  63期王将戦
菅井vs畠山成幸.kif 直
13 菅井五段vs日浦市郎八段  19期銀河戦
菅井vs日浦.kif 直