ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

将棋の魔力に魅入られて

 日本将棋連連盟のホームページに「将棋棋士の直観の脳科学的研究」(将棋プロジェクト)という項目があり、その中にエッセイがある。第2回に横浜理化学研究所長の大熊健司氏が登場しており「将棋の魔力に魅入られて」はその標題でもある。
 タイトルは将棋の魔力・・・になってはいるものの、メインの話は詰将棋である。大きく分けて二つあり、一つは詰将棋の解図である。「将棋図巧の解図にのめりこみ、寝ても覚めても必死で考える。長時間図とにらめっこしていると、目をつぶっても局面が現れるようになりそれを詰める。さらに、歩きながらでも、別に図を見つめないで詰めている自分に気が付く。もう無理かと半ばあきらめ、そのことを考えないときに例えば、通学に電車内でふっと思いがけない手が浮かぶ。浮かぶから不思議だ。よしこれだと思って、改めて考え、詰めたことも再三ならずあった。作品のなんと芸術的なことよとただただ感嘆した。詰めきった後のあの高揚感は、作者伊藤看寿の意図を捉えたことの何ものにも変えがたい喜びであった・・・」。もう一つはよく論じられる詰将棋の数学論。「詰将棋は数学の問題と似ていると思っている。基本的には答えは一つ。きわめてロジカル。しかし、解き方から言えば、代数の、順々に方程式を解いていくような方法論があるわけでない。どちらかといえば、幾何の世界。補助線を描けばたちまち解けてくることと似ていなくもない。詰将棋の作図を見、すると、経験と勘としか言えないが、此処に答えの道があるとの心の囁きがすぐに起こりその声に導かれて、時に行きつ、戻りつ、行きつして、やがてその奥の作者の意図が見えてくる・・・」とある。
 このエッセイを読んで、正直びっくりした。この方は、おそらく詰将棋パラダイス誌の世界とは無縁の方なのであろう。世の中にはスゴイ人がいるものだ。これほどまでに、「図巧・無双」にのめり込まなかった自分が思わず恥ずかしくなるくらいである。他のエッセイも興味深い記事が多い。HPを見ても、見逃がしてしまうようなところなので、今後も注目していきたい。
本日の詰将棋:5手詰