ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

佐々木勇気五段

「蕪村春秋」という本で高橋治は「世の中には二種類の人間しかいない。蕪村に狂う人と、不幸にして蕪村を知らずに終わってしまう人とである」と書いている。
 そのひそみにならうなら、人(将棋フアン)は将棋の世界に遊びながら、ふと詰将棋という魔界の世界に入り込み、詰将棋の魅力に取りつかれてしまう人と、不幸にして(むしろ幸せかもしれない)指し将棋の趣味だけで終わってしまう人がいると私はつねづね思っていた。
 プロ棋士たるもの、できたら両方を極めてほしいと願っている。
その修業時代(主に奨励会)に棋力向上の一助として詰パラを活用しているケースが多いので、詰将棋を真に理解するという下地は十分にできていると思っているからである。


 7月2日、藤井聡太四段vs佐々木勇気五段という注目の一戦があった。
詰将棋にも注目される藤井四段だが、佐々木五段も詰将棋愛では負けていない。
詰パラ誌で彼の作品が表紙を飾ったことがある。そしてその作者の言葉では、無双・図巧を解き終わり、作品を作りたくなったとある。何の世界であれ、素晴らしい芸術作品に触れたとき、人は自らの魂をゆさぶられることがあるものである。
 詰将棋解答選手権のチャンピオン戦でも彼はここ数年連続出場している。今年の第14回大会では6位に躍進している。この大会における藤井四段の独走は許したくないとの気概も感じられ、いわゆるプロ根性というものが伝わってくる。
 彼は振り飛車党ではないが、こういう人はつい応援したくなるものである。


 さて、注目の一戦は佐々木五段の勝ち。
いつの日かこの瞬間が来るとはわかっていたとはいえ、実力者佐々木五段がその力を発揮したというところかと思います。藤井四段としては連勝新記録を打ち立てた直後のことでもあり、あまりにも騒がれすぎで、ある意味ホッとしていることでもあるでしょう。今後、新たなる神話を次々に作りだしてくれることと思います。

佐々木勇気五段作:詰パラ(2016年5月号)15手詰