ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

エリリンの四間飛車

 7月27日の第10期女流王座戦本戦トーナメントより、先手・山口恵梨子女流2段vs後手・加藤桃子女流3段の一戦。先手は角交換四間飛車を目指したが、後手は角道をなかなか開けず、後ほど引き角にした。途中図は昼食休憩にはいった局面(46手目76飛)である。再開後は大捌きの予感がする局面ではある。

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 さて予想通り65桂 66飛 53桂成 同銀 68歩 69角 74飛と進んだ。先手は取り残された79銀が気になるが守りとしてそれなりの役割を果たしたいところだ。以下は後手の攻め・先手の受けという構図になったが攻めの勢いがゆるまなかった後手が116手で制した。山口さんが「攻める大和撫子」といわれたころの将棋をあまりよく知らないが本局に関しては効果的な反撃の手段がなかったものの攻守のバランスはとれているように思えた。

今回の詰将棋:11手

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相振りにおける美濃囲いの端攻め

7月23日におこなわれた14回朝日杯予選より、先手・石川優太4段vs古森悠太5段の一戦。相振り飛車となった。先手の囲いは金無双、後手が美濃囲い。途中図は54手目82玉の局面。

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 さてここから先手は後手の美濃囲いに端攻めを敢行する。これが面白いように決まり、一つの成功例だろう。87手で先手が快勝した。二人は名を同じく「ユウタ」と呼び、関西の若き振り飛車党である。これからも振り飛車の将棋をみせてくれることを期待したい。

今回の詰将棋:23手詰

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伊予国の「ことみ姫」相振りに舞う

 7月24日の女流王座戦本戦トーナメントより、先手・山根ことみ女流2段vs後手・上田初美女流4段の一戦。

 両者、向い飛車で始まった。途中図は昼食休憩にはいった局面(56手目後手52玉の局面)。先手は飛車と香車の力で後手の金美濃の8筋を突破したところで先手が優勢である。

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  この後は先手が優勢を拡大しながらどうやって後手玉に迫っていくかである。相手の攻めとの間合いをはかりながら終始強気の攻めで押し続けた。寄せで後手も怪しいネバリをみせたが109手で難敵に勝利した。次局はベストフォーをかけて岩根忍さんと対戦する。熱戦を期待したい。

 ところで、山根さんはさきの棋聖戦のアベマ中継で解説の聞き手を務めていた。そのとき、乃木坂の西野七瀬に似てると一時、ネットで話題になったようだ。そういえば、あの日はシックな着こなしで少々大人びて見えた。彼女はデビュー時点から詰将棋好きで振り飛車党なのでひそかに応援している。

今回の詰将棋:19手詰

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竜王戦本戦トーナメント始まる

7月23日の第33期竜王戦本戦トーナメントより、先手・久保利明9段(1組3位)vs後手・佐々木勇気7段(2組優勝)の一戦がおこなわれた。

先手・久保9段の四間飛車で始まった。途中図は昼食休憩にはいった局面(37手目先手38金と指したところ)

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次の途中図は夕食休憩にはいった局面(71手目先手34歩の局面)

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この後、本譜は3筋で互いの守り駒のはがし合いの応酬がとても印象に残る一局となる。とくに主役は小駒でとりわけ桂の活用が興味深かった。111手で久保9段の勝利。タイトル挑戦の可能性に残ってくれて素直にうれしい。

今回の詰将棋:15手詰

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惜しい一局

 7月22日に行われた女流王座戦・本戦トーナメントより先手甲斐智美女流5段vs後手中村桃子女流初段の一戦。後手の角交換四間飛車で始まった将棋は昼食休憩に入った時点での途中図は下記の通り。後手向い飛車に転じて先手は7筋・8筋の位を取るなど本格的な戦いはまだまだという感じだった。(38手目・52金寄るの局面)

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両者、振り飛車党だが甲斐さんが譲ったのだろう。さて、将棋は後手が指せる状況だったがどこかで決め手を逃したようだ。攻守入れ替わってからの先手の寄せは的確で後手に勝ち目はなかった。中村さんにとっては惜しい一局となった。

今回の詰将棋:17手詰

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女流の将棋は相振りで輝く

 7月17日は女流王座戦の二次予選。先手・藤井奈々女流初段vs後手・中村真梨花女流3段の一戦。両者は振り飛車党のため期待通り相振り飛車となる。相3間飛車で囲いは互いに金無双である。出だしが75歩と35歩の突っ張り型の3間は女流将棋に圧倒的に多い。

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 途中図は昼食休憩に入ったときの局面図(54手目45銀)である。その後は後手の攻め、先手の受けという構図が100手以上になっても続く。104手目に金銀が交換になってからは局面がより動き始めた。本格的な真梨花攻めが始まったが受ける!耐える!と延々と続き手数は200手超えるも、ついに反撃のチャンスを先手が得て勝ち(229手)となった。

 藤井さんは前局の本田小百合女流3段との一戦でも感じたことだが辛抱つよい指し回しが印象に残る。振り飛車党であることと詰将棋好きということでもあり、なんだか積極的に応援したくなってきた。

今回の詰将棋:23手詰

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振る飛車や昭和は遠くなりにけり

 新棋聖の誕生はまことに喜ばしいことだ。

 マスコミの狂騒は別として新しいスターが着々と地歩を固めていくことは将棋界のためには広い意味で良いことなのだろう。私の懸念は振り飛車の時代が少しづつ遠のいていくだろうことしかない。

 昭和40年代(明治100年にあたる頃)に「明治は遠くなりにけり」という言葉がはやったことがある。俳人中村草田男の有名な句「降る雪や明治は遠くなりにけり」がモチーフである。時代はめぐり、やがて昭和が100年になる頃がほどなく訪れる。いろんな分野でいろんな人が感慨深い思いをすることだろう。こと将棋に関して私の懸念が現実のものにならないことを今は祈るしかない。

今回の詰将棋:17手詰

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