ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

A級へ向けて二人の大一番

1月23日B1順位戦の11回戦がおこなわれた。

アベマTVで菅井竜也7段vs斎藤慎太郎7段の中継があった。

先手後手があらかじめ決まっている順位戦だが後手の菅井7段は早めに3間に振った。

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上記途中図は先手が23手目58金右と指したところで昼食休憩となった。この将棋は先手が居飛穴、後手が振り穴を目指し延々と駒組が続き午後4時半まで駒の衝突すらなかった。二人とも容易に負けない将棋を心がけているのだろうが、みている側としては少々退屈な気分になるものだ。解説が付かない映像だけの配信だけになおさらそう感じるのだろう。そういうこともあり本格的な戦いは夕食休憩後となった。その後、後手は相手の攻めをかわしつつ、やや細い攻めながらうまく手をつなぎ144手で勝った。これでA級昇級を決めた。彼の将棋人生において「エポックを画する」できごとであり、我がことのように嬉しい。「竜棋会」の仲間とともに素直に喜びを分かち合いたい。

叡王戦準決勝

1月22日は叡王戦の準決勝第1局がおこなわれた。

渡辺3冠vs青嶋5段戦である。先手番となった青嶋5段は前局に続いて振り飛車(55歩位取り中飛車)である。加えて解説が藤井猛9段だったので嬉しい限りである。『餅は餅屋』とはよくいったもので棋界のいろんな話しをまじえながら、振り飛車の変化等を分かりやすい口頭解説しながらでもよく理解できた。

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上記途中図は28手目に後手渡辺3冠が33角とあがったところである。この後、この将棋は先手の飛車角が捌けないなか、後手の飛車が8筋の敵陣へ侵入した。よく4枚の攻めは切れないというが、後手は2~3枚で寄せきった感じである。後手が強すぎるという面もあるが、先手の不出来さが目立つような気がする。

女流名人戦(1月19日)

 19日の午前中は朝日杯の待ちに待ちたる菅井7段の登場だ。相手は藤井7段。この将棋は昨日に劣らず大熱戦だったが菅井7段は負けた。

 とたんに興味の対象は女流名人戦第1局に集中した。

それにしても、朝日杯(金土日)は3日間で延べ9局の対戦がおこなわれたが振り飛車になったのは菅井7段の対局のみ。プロ棋士振り飛車嫌いが本日の菅井さんの敗戦以上に輪をかけて極めて残念至極なり。

 さて、女流名人戦の方は私の大好きな相振り飛車だった。

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 上記途中図は先手挑戦者の谷口さんが81手目に66金と角にあてたところである。1筋に手がついていて、他の攻め駒が急所にきており後手が指しやすい感じである。このあと、後手は66角と指し同飛に17歩成がやはりきびしくほどなくして先手投了した。

第2局は1月26日に出雲市で行われる。

朝日杯オープン(1月18日)

 朝日杯将棋オープン戦本戦が始まっているが、1月18日の2局はネット中継が解説付きだったので朝から眺めていた。

 本日の主役は深浦9段だった。午前中、豊島2冠を大熱戦の末に勝利し、午後からは千田7段にこれまた負けはしたものの見ごたえがある将棋だった。それらの見ごたえとはともに終盤が詰将棋の素材がいたるところに出現するような内容だったのだ。これらをみて詰将棋作家がふるえないはずはない。

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 上記の詰将棋は深浦vs千田戦の目まぐるしく変化した終盤をヒントに作ってみた。23手詰である。

もう一つのベスト4入りをかけて

 世の中には振り飛車党を公言できる棋士は別として、振り飛車なんか指すものかとの信念を持つ棋士と稀に振り飛車を指すことがある棋士の二種類がある。後者の場合は対局中継の時、いちいち確認しなければならないから大変だ。振り飛車フアンに気を持たせる罪作りな人でもある。青嶋未来5段はそういった棋士の一人である。

1月13日叡王戦本戦より斎藤慎太郎7段vs青嶋未来5段の対戦があった。

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  上記図は先手青嶋5段が55歩位取り中飛車で後手が26手目12香と居飛穴を目指したところである。この中飛車は以前、よく私も指していた形なので興味深く観戦した。なかなか手に汗握る攻防という感じで特に互いの金銀の捌き合いが印象に残る。勝負は119手で先手が勝った。A級に登らんとする7段の若手にイキの良い5段が勝つという2日前の叡王戦の再現となった。なんというドラマチックなことであることよ。これで2つ先のことではあるが佐々木5段vs青嶋5段の決勝戦にでもなれば新たなる叡王戦ドリームが誕生することだろう。

ベスト4入りをかけて

 1月11日、叡王戦本戦で菅井竜也7段vs佐々木大地5段の一戦がおこなわれた。いったい、どちらを応援すればいいんだというところだが、私から振り飛車を取り上げたら詰将棋しか残らないから方針は明白だ。とにかく好局を期待した。

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  菅井7段の先手で始まった本局は55歩位取り中飛車となり50手目に後手が54歩と打ったのが上記の途中図である。

 ここから先手は55歩とあわせて攻めを継続するが捌けば捌かれるというように、どうも先手はねじり合いの攻防に遅れを取ったというか力負けの感じがした。結果、後手が100手で勝利した。

 佐々木5段はC2順位戦で現在昇級の目がほとんどないとは信じられないほどだ。世の中には強すぎる5段がいるものだ。もう脱帽しかあるまい。ぜひこの叡王戦での快進撃を続けてほしいものだ。

王位リーグ入りが意味するもの

 佐々木大地5段は昨年暮れの棋王戦挑戦者決定戦で敗れ、ほどなくして海外旅行に飛び立った。

 その戦いの結果にかかわらず計画していた旅だったとしても普通なら傷心の旅になるところだ。でも、そこは勝負師。何らかのプラスになるものをつかみたいと思っていたに違いない。旅はえてして日常の中の自分とは違うものを感じ取り、いわゆる視野が広がる機会を得ることがあるものだ。

 そして、年も改まり1月7日王位リーグ入りをかけた渡辺明3冠との対戦を迎えた。この日、アベマTVで中継があった。日頃、振り飛車戦以外はみることがない私は彼の結果としての勝敗が気になり時折のぞいていた。中盤、飛車金交換で駒得してからは指しやすい状態が続き、収束はまるで詰将棋の邪魔駒消去を見るがごとく銀の成り捨てで勝利した。この1勝の意味するものは極めて大きい。

さらなる活躍を期待したい。