ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

『時の花をかざしの花にせよ』

謹賀新年
 
 昨年は菅井七段が王位を失冠しましたが、久保王将がタイトルを防衛して嬉しさ半分といったところです。ネット中継を観ていると本当に振り飛車戦が少なく淋しい限りです。

 詰将棋解答選手権・長崎会場は3年目に入りますが、昨年は参加者がなんとか二ケタになり、今年はそれを継続できたらと思っています。


昨年、4月には母校・和歌山大学(経済学部)の同窓会の九州支部長を引き受け、また本年より発足した日本将棋連盟長崎県支部連合会では会計担当を引き受けました。
 その影響もあり、SNSを拡げて現在、ブログ2本、ツイッター、フエイスブック、ラインの各アカウントを所持しています。

何事であれ、興味を持てなくなったら精神が萎えていくのではないかと思います。この世を渡るには片意地張らず時流に乗って生きるのが世渡りのコツだと常々思っています。標題の『時の花をかざしの花にせよ』はそういう意味です。私の好きな言葉の一つです。


 

2019年 長崎県将棋大会等予定表

1月20日(日) 支部対抗団体戦(長崎支部代表決定戦)
2月3日(日)  第44回小学生名人戦
2月3日(日)  第26回全国シニア名人戦
2月17日(日) 支部対抗戦(個人戦団体戦の県大会)
2月及び7月   青雲荘将棋大会(雲仙市
3月17日(日) 第41回西日本久留米王位戦
4月6日(土)  詰将棋解答選手権(初級戦・一般戦)市民会館
4月14日(日) 第32回アマ竜王戦
5月12日(日) 3世代将棋大会(ネンリンピック選考会)長崎勤労福祉会館
5月18・19日(土・日)高校総合文化祭将棋選手権(団体戦個人戦)於ける:佐世保工業
6月2日(日)  第32回高校竜王戦
6月2日(日)  第21回県中学選手権
6月16日(日) 第15回中学校団体戦
6月16日(日) 第15回小学校団体戦
6月23日(日) 倉敷王将戦
7月14日(日) 第73回アマ名人戦
8月・9月    赤旗名人戦地区大会
8月〜9月    国見町夏季将棋大会
9月・10月   広田杯将棋大会(佐世保市
10月      赤旗名人戦県大会
10月      朝日アマ名人戦県予選
10月〜11月  田平町文化祭将棋大会(平戸市
11月      高校新人戦(団体及び個人戦
11月後半    長崎県支部連絡会議・交流会
12月8日(日) 支部会員等将棋大会・交流会


*会場は原則、三菱記念会館でam9:50受付、am10:20開始。
*2019年1月1日付で「長崎県支部連合会」が発足いたします。
 当該連合会が基本的に今後の将棋大会の管理運営をいたします。
*私(管理人)も時折、お手伝いしている「日曜子供教室(月に1,2回)」が開かれています。
詳細は「将棋ふぁんたブログ」URL=https://blog.goo.ne.jp/kokkodeshoを参照。

倉敷藤花戦第2局

 倉敷籐花戦の公開対局を観に倉敷市へ行ってきた。
近年、継続している晩秋の楽しみの旅である。
よく出かける理由は「将棋ペンクラブ」の大賞推薦委員をしている関係で倉敷藤花戦は担当棋戦の一つでもあり、やはり公開対局を生で観ておくこともためになることがある。
 それに、菅井七段のホームグラウンドである岡山県下でもあり、その後援会である「竜棋会」のメンバーでもある私はこの日に親しくしている会員の方々と久しぶりに談話できることも楽しみの一つとなっている。


 さて、対局の方だが里見香奈倉敷藤花に対して挑戦者は谷口由紀女流二段である。
先般、行われた第1局は相居飛車戦となり、「相振り飛車シリーズ」となると見ていただけに意外性とやや不満を感じていた。その将棋は挑戦者がうまく指したものの逆転負けを喫してしまったのは周知のとおりである。後を引き摺らねばいいがと願いつつ、2匹目の泥鰌を狙わずに、挑戦者は指し慣れた振り飛車を披露して悔いなき対局を期待して見守ることにした。期待通りの相振りになったが里見さんよりポイントを徐徐に上げられて終始、相手の攻めを受け止めるという印象だった。谷口さんの得意の攻めの展開にもっていけなかったことが力を十二分に出せなかった意味で敗因だろう。
 やはり、第1局を勝ちきれなかったことが返す返すも残念だ。ああいう将棋を落とすと、やはり後を引くものだ。将棋の流れとはそういうものだろう。
 今回は相振りだったので戦い方の極意といったものはよく分かっているつもりだったので大盤解説会場へ移動することなく公開対局会場にてゆったりと観戦した。
 午後3時5分の早い終局がフアンとして少し物足りなさを残した感じだ。
もっと白熱したお互いに見所がある戦い方を望んだが仕方がない。
 やはり里見さんの振り飛車女流棋士のなかではプロットの組み立て方といい、一頭地を抜く指し手であることを確認したような将棋でもあった。

観戦記で振り返る「王位戦7番勝負」

 第59期王位戦7番勝負は7月4日の豊田市での対局を皮切りに最終局までもつれ、9月27日に終了した。
 新聞観戦記の方は8月21日に始まり、11月15日に終了した。1局あたり、12譜にわたり解説されたので、12×7局=84というわけで延べ84日分の新聞連載となった。
 執筆にあたった観戦記の担当者は第1局より、鈴木宏彦氏、諏訪景子氏、原田史郎氏、小池大志氏、相崎修司氏、池田将之氏、小池大志氏の各氏である。
一連の記事を最初から読み進めて見ると、なかなか壮観である。振り飛車シリーズとなったこともあり、一つの単行本としてまとめてみるのも、見ごたえがあるというものだろう。
 本欄で全局を紹介するのは無理があるが、中でも第7局の小池大志氏の観戦記は心引きつけられるものがあった。それはまず、振り駒をめぐる二人の心理分析であり、タイトルを失うことになる菅井さんの心の変遷が実によく表現されているからである。
 それでは具体的に紹介していくと、
<振り駒時の心境について>
豊島:第6局は先手番で苦戦しましたが、負けた3局は内容も悪かったので少しほっとしました。
菅井:先手が欲しかった。先手ならどう進んでもいい勝負になる作戦を用意していたもので、心臓の鼓動が激しくなる中で記録係の『と金が』という声が聞こえた時は、思わず口元がゆがみそうになるのをこらえました。

<第2譜より>
菅井:おまえには別に振り飛車を求めていないよ、とにかく勝ってくれというのであれば別のやり方もあるのかもしれませんけど。将棋フアンは振り飛車党が多いし、僕も振り飛車の方が好き。考え抜いた末、今期は振り飛車で行くと決めたんです。僕と豊島さんはまったく違う山道を登っていた気がします。

<第4譜より>
菅井:面白い将棋とはなにかと考える中で、強いコンピューターが示す手を指すだけなら、僕自身の存在価値がないので棋士をやめてもいいとさえ思っている。自分には人とは違う発想があるという勝手な自信があって、個性的な将棋をどうフアンに見せて勝つのかが最大の課題です。

<第7譜より>
菅井:タイトル奪取からのこの1年は行儀のいい将棋を指しすぎてしまった。王位にふさわしい将棋というイメージを自ら作り上げて縛られてしまって・・・。自分は菅井の将棋を指すしかないのに・・・。一局の均衡を壊さない指し方を意識するあまり、悪手でもいいから知恵を絞って魅力的な手を指そうとする努力を怠ったのが悔やまれる。

<第8譜より>
菅井:もう一度原点に返ろうと思っている。詰将棋を徹底的に解くとか、棋譜をひたすら並べるとか、局面を自力でとことん考えるとかいう地味な勉強を、昔より強くなった自分が気持ちを入れ替えてやらなくてはいけないのかな。

<第9譜より>
菅井:今までの自分は対局を100%優先させてきたんですが、目の前の一局を指せること自体どれだけありがたいことか。恵まれた環境の中で、僕自身が一人の棋士として将棋にどう向き合ったらよいかを考える大事な契機になりました。<第11譜より>
*相手より74香と打たれた時に、
菅井:本当にしんどかった。もう絶望的に助からないのは分かっているのに、でも何とかならないのかなとなにかにすがりつきたい一心で、なにかありえない奇跡が起こるんじゃないかと虫のいい順がぐるぐる回りました。そのうち、ふと師匠の顔が浮かんできたんです。この日は関西将棋会館大盤解説をしてくださっていた。その解説会には岡山から大勢の方が来てくれていることを思うと、切なさが込み上げました。
*自ら77角を打つ瞬間に
菅井:ああ、これで自分はタイトルを失うんだなとさらに心が打ち震えました。

<第12譜より>
*失冠後数日して
菅井:この苦い経験を26歳の自分がどう生かせるか。ただ落ち込んで腐っているようでは何の意味もないので、また堂々と胸を張って岡山の街を歩けるようになりたい。

 以上が抜粋ですが、このような読み応えのある観戦記は久しぶりである。
「将棋ぺンクラブ」の観戦記部門の次回大賞候補に推薦したくらいのインパクトがあった。

王位戦最終局(悲痛の失冠)

 夏の王位戦と云われるタイトル戦がもつれにもつれて第7局までくると本格的な秋の訪れを感じさせる季節となる。最終局まできた要因は形式的にみれば、先手番が勝ち続けたことにある。
 個々にみれば、例えば後手番で勝利してもおかしくなかった対局(第6局)があったにもかかわらず、まるで天の邪鬼な将棋の神様に魅入られたとしかいいようがなかった。
 その第6局から最終局に至る間の順位戦を始め、他の対局結果が悪かった。
勝っておかしくなかった第6局をひきずっているのか、まさか王位戦一筋に死んだふりでもあるまいに将棋そのものの調子を崩してしまっているのではないかと危惧していた。


 さて、第7局(9月26&27日)はあらためて振り駒となり、菅井王位は後手番となった。少々、イヤな予感がしないでもなかった。注目の戦型は第6局に続いて居飛穴vs振り穴となった。互いに意地と意地のぶつかり合いである。互角の戦いだろうとみていたが、2日目の午後に早い収束が訪れた。もしかしたら、王位戦だけはやってくれるのではないかという一縷の期待もかなわなかった。
 王位タイトルを失って非常に残念だ。
なにか、人生劇場・飛車角(久保王将&菅井王位)の角がもぎ取られたみたいで淋しい限りである。
これで私の観る将棋フアン度が50%ほど減少しそうである。しかし、これまでもアベマTV、ニコニコ動画、NHKと「振り飛車戦」以外は見ないことにしているからあまり変わらないか(それだけ振り飛車戦が少ないという憂うべき現実がある)。次のタイトル戦の楽しみは王将戦までお預けである。実は菅井さんにはこの秋、期待していることがある。10月下旬に私が関西へ行く楽しみをぜひ実現させてもらいたいものである。
   <大阪で せめて勇姿を JT杯>

北九州将棋フエステイバル

 9月16日に標記のイベントで小倉に行ってきた。
この大会は今年で25回を数え、以前は3月に開催されていたが近年は秋の開催となった。
 午前中は事前に申し込みをされた人々に対して指導対局が行われた。
どの棋士から指導を受けるかは当日まで分からない。
私は谷川浩司九段に指してもらうことになった(手合いは飛香落ち)。
これまでいろんな将棋イベントに参加するさい、谷川九段とお会いするたびに挨拶は交わすのだが将棋そのものを指してもらうことは初めてであった。
めったにないことであり、人生の良き思い出となった。


 途中図(43手目)は上手が下手の石田流の駒組を牽制すべく84銀と上がったところである。
これを受けて下手は65歩以下、総攻撃を開始した。
65歩に対して73銀と引かれた手が少し意外に感じた(75歩には同角とする予定)。
上手は銀桂交換に応じて、99角成ともたれて指してきた。
下手・64角が強手。64銀〜74飛と進出したあたりでは、下手の攻めは切れないのではないかと感じた。
収束、下手の77桂から89香が決め手となり、上手は投了された。

     ▽34歩   ▼76歩 ▽44歩  ▼16歩 ▽42銀  ▼15歩 ▽32金
▼18飛 ▽43銀   ▼14歩 ▽同歩   ▼同飛  ▽13歩  ▼16飛 ▽62玉
▼75歩 ▽72玉   ▼76飛 ▽62銀  ▼96歩 ▽64歩  ▼74歩 ▽同歩
▼同飛  ▽73銀   ▼76飛 ▽74歩  ▼97角 ▽54銀  ▼77桂 ▽45歩
▼68銀 ▽62金   ▼66歩 ▽44角  ▼67銀 ▽43金  ▼48玉 ▽94歩
▼58金左 ▽63金   ▼56銀 ▽84銀  ▼65歩 ▽73銀  ▼85桂 ▽99角成
▼73桂成 ▽同金    ▼64角 ▽44桂  ▼73角成 ▽同玉   ▼64銀 ▽62玉
▼74飛 ▽72香   ▼52金 ▽同玉   ▼72飛成 ▽62金  ▼81龍 ▽56桂
▼同歩  ▽66馬   ▼38玉 ▽65馬  ▼63歩 ▽同銀   ▼同銀生 ▽同玉
▼55桂 ▽74玉   ▼77桂 ▽87馬  ▼89香 まで76手で下手の勝。

FLASH(9月4日号)

藤井聡太を撃ち破った男たち」と題して、次の4人の棋士のインタビュー記事が掲載されている。
順に、大橋貴洸四段・上村亘四段・菅井竜也王位・増田康宏六段の4人である。

中でも注目したのは贔屓の引き倒しになりかねない菅井王位である。
彼の話しのポイントは次の四点にしぼられる。
1「若手はコンピューターを研究に使わざるをえない世代です。それだと個性がなくなり、フアンから飽きられてしまう。羽生世代は一手への理解の深みが違う。」

2「30年から50年たっても鑑賞される棋譜というものは、コンピューターが示した手ではなく、人間が編み出した将棋である」

3「私は連勝記録や勝率を評価しません。それよりもタイトル獲得や棋戦優勝の方が価値がある。」

4「詰将棋の計算力は藤井さんの方が私の10倍は速いでしょう。でも、実戦ははるかに複雑で、直感が求められる。どこまで読んでいるかなんて、数値で証明できない。証明できないものを恐れる必要はない」

*2で述べられている後世に残る棋譜の一つと云えば、大野・大山の振り飛車であろう。彼の振り飛車もその類いであろうし、またそうなってほしいと思っている。冒頭で、藤井将棋は好きではないと云いきっているが、100局指しても「振り飛車」が全くない藤井将棋への皮肉に聞こえないこともない。あえて人間くさい手にこだわりを持ち続ける彼の性分が全体的に感じられる内容であった。