ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

振り飛車党

 「居飛車」「振り飛車」という言葉はあるがこの二つは決して対極の関係にあるものではない。居飛車は生まれた時の姿で戦いを開始するが、振り飛車は盤上をいきなり左回りの旅に出る。そこに夢とロマンを感じるし、ときおり捌きという芸術性に感銘を覚えることすらある。

 

 もしも「振り飛車党」という言葉を飛車を振ることを宿命づけられ、ほかの指し方など考えられもしない人と定義するならもはや現在のトッププロの世界(A級やタイトル挑戦の意味)において真の「振り飛車党」は見当たらなくなったといえるだろうーおそらくただ一人菅井竜也八段を除いて。

 

 世間の注目は藤井竜王がタイトル数を増やすことばかりに注目されがちだが、もし菅井八段がタイトルを奪取したら振り飛車の灯がかそけくともるだろうし、敗退してしまったらその落胆も大きいものとなる。おそらくFスーパースターは向こう四半世紀は棋界に君臨し続けることだろう。勝負の世界においては弱きものが強きものに習っていくものである。振り飛車党から居飛車党に転向することはあってもその逆はまず起こりえない。振り飛車にとっては暗黒の時代に入っていくことだろう。あの昭和40年代に晩年の大山・升田が時折、「振り飛車の芸」を披露していたころが今となってはなつかしく思い出されて仕方がない。

 

今回の詰将棋:23手詰