ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

ほのぼの師弟愛

 今年の森一門会祝賀会に出席したことは5月6日付のこのブログで掲載したところである。
その時の来賓挨拶の一人として登壇された方に黒川博行さんがいた。彼は「破門」という作品で第151回直木賞を受賞された方である。
森信雄七段との交流のいきさつは先の「将棋世界」でお二人の対談が掲載されていたこともあるので、よく承知していた。


 さて、黒川さんの著作の一つに「大阪ばかぼんど」(幻冬舎文庫)というエッセー本がある。その中では彼が近鉄将棋まつりでの席上対局、奥さんとの将棋対局など、彼の趣味の一つである将棋の話題が数本、収録されている。その種の話題に関連した「仲人」というサブタイトルがついた一文に故・村山聖さんが登場する。村山さんの数あるエピソードのなかでも、とりわけほのぼのとした感じがいまだにする出来事でもある。抜粋して以下に紹介したい。


 ・・・・生まれて初めて仲人をした。新郎は日本将棋連盟棋士、森信雄六段、新婦はピアノ教師をしている恵美子さんで、披露宴の当日、会場に集まったのは将棋関係者を中心に約百五十人。・・・中略・・・
 森さんの弟子の村山聖七段のスピーチが印象に残っている。
「ぼくは新聞の記事を読んで森先生の結婚を知りました。普通、こんなことってありますかね。弟子にいわない師匠がありますか」俯いてぼそぼそと話す村山さんに、
「大丈夫か。ちゃんと喋れるか」と、隣の森さんが優しく話しかけていた。
 なるほど、これが師弟愛なのだ、とわたしは胸をうたれた。