ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

プロへの道

 明治の文豪に幸田露伴がいた。
高校時代、国文学史のテストで複数の語句の中から、「幸田露伴」、「五重塔」、「擬古典主義」の三つを選んで線で結べば点がもらえるという記憶しかなかった作家であった。


 その後、露伴に将棋が趣味であったことが分かり、少し親近感を持ったが、とりわけ、作品に親しんだわけではなかった。
実はその後、驚いたことがある。
露伴の娘を「幸田文」と云い、その一人娘を「青木玉」と云い、またその子を「青木奈緒」という。
いずれもりっぱな文筆家である。青木奈緒の作品にはあまりふれたことはないが、幸田文青木玉の数々の随筆作品にはいまだに心を揺さぶられることがある。


 それはそれとして、驚いたというのはかくも文才というものが確実に次の代に引き継がれていくものであろうか。
普通、遺伝子的には二分の一の確率でうすまっていくはずなのだがと自然に思うところだし、他の物書きの例をながめても、ほとんど見当たらないのできっと特殊なケースなのだろう。


 そこで、将棋界をみてみると、兄弟で将棋が強いということはアマプロを問わず、よくあることだが、これが親子間になるとあまり例がない。
 親の姿をみて、自分もと決意してもそこにはプロへの厳しい壁が立ちはだかる。あるであろう才能に加えて将棋が好きということを通り越した並々ならぬ努力が求められるし、親の立場としてもそこまでつらい苦労をさせたくないという親心があだに作用することもあるだろう。
 どんな分野であれ、いくら好きなこととはいえ、その道のプロになるのは決して生易しいことではないのである。