大野源一九段が不慮の事故で亡くなられてから37年が経過する。
大野さんは戦後の将棋界で江戸中期以降すたれていた振り飛車をプロの戦法として復活させ、「振り飛車名人」の異名を持っていた。
弟弟子の升田さんも「大野さんの捌きは日本一だ」と絶賛したほどであった。
大野流は振り飛車党が少ない現代将棋界においては、華麗な捌きを信条とする純粋振り飛車党の久保利明九段がりっぱに引き継いでいると思っている。
大野流振り飛車は3間飛車に好局が多いが、中飛車に注目して今回は棋譜を拾ってみた。
その中飛車にも特徴がある。53銀型(先手なら57銀)中飛車であり、ツノ銀中飛車は少ない。この銀の位置なら3間への転用もしやすいなど、軽快な捌きをめざす棋風にふさわしいのだろう。
まず、紹介したいのは最後の順位戦となった対局(1978年)より、
大野源一 vs 本間爽悦 の一戦である。
▲76歩 ▽84歩 ▲56歩 ▽85歩 ▲77角 ▽54歩
▲58飛 ▽62銀 ▲55歩 ▽同歩 ▲同飛 ▽42玉
▲48玉 ▽32玉 ▲78金 ▽42銀 ▲68銀 ▽34歩
▲59飛 ▽77角成 ▲同銀 ▽52金右 ▲38玉 ▽33銀
▲28玉 ▽14歩 ▲16歩 ▽42金上 ▲38銀 ▽24歩
▲66銀 ▽25歩 ▲77桂 ▽53歩(途中図)
途中図は34手目後手が53歩と打った局面である。
この局面はまるで、ゴキゲン中飛車の角交換型によくあらわれる形と思いませんか。
40年以上も前に、こういった将棋が指されていたことにあらためて感慨と驚きを覚えます。
それでは途中図より終局まで棋譜を追ってみましょう。
▲89飛 ▽74歩 ▲86歩 ▽同歩 ▲85歩 ▽64歩
▲86飛 ▽73桂 ▲75歩 ▽63銀 ▲95角 ▽65桂
▲73角成 ▽81飛 ▲65桂 ▽26歩 ▲同歩 ▽65歩
▲同銀 ▽75歩 ▲36歩 ▽76歩 ▲46馬 ▽77歩成
▲同金 ▽71飛 ▲72歩 ▽同飛 ▲73歩 ▽62飛
▲84歩 ▽54銀 ▲同銀 ▽同歩 ▲53歩 ▽同金左
▲83歩成 ▽27歩 ▲同銀 ▽55銀 ▲72と ▽64飛
▲81飛成 ▽46銀 ▲同歩 ▽61歩 ▲76桂 ▽65飛
▲66金 ▽同飛 ▲同歩 ▽67角 ▲38金 ▽25歩
▲同歩 ▽26歩 ▲同銀 ▽49角成 ▲27銀 ▽48金
▲39銀 ▽56桂 ▲37銀 ▽38金 ▲同銀引 ▽76馬
▲61龍 ▽51金打 ▲91龍 ▽66馬 ▲62と ▽57角
▲51と ▽39角成 ▲27玉 ▽26歩 ▲同玉 まで111手で先手勝ち。
後手に5筋を固められた先手は89飛と飛車の転回を図って8筋より手を作っていきます。
玉頭から美濃の形を乱され二度の銀冠に補充しながらも2枚角で迫られますが、何とか寄せ合い勝ちをおさめたといったところです。
以下は本局を含めて、17局の実戦譜を集めてみました。
1 大野源一vs本間爽悦(55歩交換型中飛車)
大野vs本間.kif
2 大野源一vs前田祐司(55歩位取り中飛車)
大野vs前田.kif
3 坪内利幸vs大野源一(53銀型中飛車)
坪内vs大野.kif
4 板谷進vs大野源一(53銀型中飛車)
板谷vs大野.kif
5 大野源一vs木村義徳(57銀型中飛車)
大野vs木村.kif
6 大野源一vs芹沢博文(57銀型中飛車)
大野vs芹沢.kif
7 大野源一vs松田茂役(55歩位取り中飛車)
大野vs松田.kif
8 坂口充彦vs大野源一(53銀型中飛車)
坂口vs大野.kif
9 大野源一vs関根茂(57銀型中飛車)
大野vs関根.kif
10 大野源一vs山田道美(66銀型中飛車)
大野vs山田.kif
11 加藤博二vs大野源一(55歩位取り中飛車)
加藤vs大野.kif
12 大野源一vs内藤国雄(55歩位取り中飛車)
大野vs内藤.kif
13 大野源一vs二上達也(55歩位取り中飛車)
大野vs二上.kif
14 加藤一二三vs大野源一(ツノ銀中飛車)
加藤一二三vs大野.kif
15 大野源一vs南口繁一(55歩位取り中飛車)
大野vs南口.kif
16 大野源一vs大山康晴(55歩位取り中飛車)
大野vs大山.kif
17 大野源一vs萩原淳(57銀型中飛車)
大野vs萩原.kif