ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

大山十五世名人

 日本将棋連盟支部会員向けに以前、「将棋」という支部機関誌が年4回発行されていたことを御存じの方も多いかと思います。廃刊が惜しまれつつ、その後年1回発行されていた支部会員名簿号も無くなり、いまやA4版のうすっぺらいペーパーが定期的に届くのみである。
 さて、大山十五世名人が亡くなったのが平成4年7月26日である。その後、この機関誌で「特集 大山十五世名人」という読者からの原稿を募集した形で追悼特集が組まれた。
 私も投稿したところ、採用掲載されて「彫り駒」をいただいた思い出がある。古い将棋雑誌を整理する中、19年前の記事とはいえ、現代にも通じる部分が多々あるので、このブログに転載して雑誌類を処分することとした。

 <講演上手の名人>
 昭和61年7月28日に長崎市役所の管理職研修の一環として、大山15世名人が講師として招かれました。
 お堅いという役所のイメージからして、人事課もいきなことをしてくれたなあと思いました。大山名人のことは、将棋フアンの一人として雑誌・TVなどである程度は知ってはいるものの、こうやって直接お話を伺うのは初めてで、当日は会場の最前列に座り、熱心に聞き入りました。その中から印象に残った点を二つほど紹介したいと思います。
 まず「プロの世界で、勝率が7割近ければ将棋界の最高位になれる。5割が平均点で、現実は4割台の人が60%ぐらいで5割以上の人が40%ぐらいである。仮に、10局将棋を指すと、7割上げるためには7番勝たなければいけない。この10局の内容は優勢な試合が5回で苦しい試合が5回ある。そういう時に、少しでも有利になれば、この5回を確実に勝って、残る若干苦しいなと思うものを2回逆転して初めて勝率が7割になる。だから、有利な将棋を1局でも失うと逆に苦しい将棋を数多く逆転しなければならない。従って、成績のいい人の共通点は良くなったら確実に勝てる、これに尽きる」とのことでした。
 プロの世界でもそうなのだから、ましてアマの世界で二転三転の形勢逆転はざらです。勝ち将棋を勝ちきることの難しさ・大切さを痛感いたしました。
 次に、アマの上達法をいろいろと話された中での一つだが、「技術的に弱い人は得意な手を作りなさい。得意な手を持つことで、少々強い相手でも負かすことが可能である。更に得意技の輪を広げること。すなわち、本を読むなり、人の対局を見るなど、自分の得意の技をいかに広げていくか、これがやはり向上していくために必要なことである」とのことでした。
 私は中飛車詰将棋だけでアマ4段の域に達しました。名人のお話を聞き、私なりの上達法も有効であったと、自信を深めた次第です。私は、故大野源一九段と大山名人の振り飛車が大好きです。大野九段に続き、大山名人の新たな振り飛車棋譜を拝見することができなくなって残念です。御冥福をお祈りいたします。
 ・・・・・・・以上が 平成4年11月15日発行「将棋」第98号に掲載された全文です。
 現代将棋の戦法の変化には目まぐるしいものがある。中飛車戦法一つを例にとっても、当時の私はツノ銀中飛車と大野流中飛車しか指さなかった。ご存じのように今では「ごきげん中飛車」が主流となってしまった。したがって、並べる棋譜久保利明二冠や近藤正和六段らの棋譜が中心となっているのは云うまでもない。

本日の詰将棋:5手詰