ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

第52期王位戦第5局(大盤解説会)

8月24日関西将棋会館で開催された王位戦大盤解説会へ行ってきた。午後5時から山崎隆之七段の解説でおこなわれるが、午後4時半ごろ、会館へ到着するも肝心の対局はすでに4時前に終局しており、「次の一手」などもできず、どういう解説会になるのだろうと思っていた。
2階道場の奥の部分を仕切って、午後5時定時にスタート。冒頭、山崎七段は王位戦の解説を終えた後、本日関西将棋会館で行われているA級順位戦・三浦八段VS久保二冠の対局を解説し、夕食休憩時点で「次の一手」を出したいと説明があり、これはまた思いがけない楽しみが増えたものだと思ったものである。
さて、王位戦の方はアシスタントなし、間に休憩も入れずノンストップで5時から7時までまるまる2時間解説があり、長丁場を全く飽きさせない熱弁であった。以下、彼の解説のポイントだけをあげてみたい。

* 22手目92香と上がらずに54銀が広瀬流。
* 先手66銀と上がったら64歩がワンセット。
* 穴熊は囲いを終わったら攻めるだけと思われがちだが、実は繊細な対応が必要な戦法である。
* 23手目78金に対して45歩は57銀と引く手があり。以下、77角成、同金、72銀、68銀上、33角の展開となる。
* 59金に対して45歩と突くのがポイント。
* 39手目通常、ビッグフオーが完成するが広瀬流はそれを苦にしない。
* 41手目16歩は手を渡した意味合いが大きい。
* 51角成、33桂のわかれはゆっくりした展開になると、51馬が働きだすので、52銀と馬を捕獲に行った。
* 24歩、26歩の交換で、ここで先手52馬と動く。同飛に対しては23歩成が残り、43銀、51飛、34銀成を羽生さんが期待した手順。駒損ではあるが、23歩成以下、良くなると先手としては自信のあるわかれ。
* 43と、55飛が指しにくい一手だった。
* 58歩は手筋。同とが普通だが56桂で先手良し。本手順の56とは少し浮かびにくい手。
* 78手目67角は俗手の好手。大駒は金銀と同一価値という穴熊独特の感覚。
* 66と、同銀、58飛成と進み、86手目69龍と迫り一呼吸置いてから59龍と桂を取ったのが後で現れる手を稼いだ好手だった。
* 最終手をみて、先手は相手の力を信用して投了した。本局は相穴熊戦では広瀬さんの経験値が大きいことを印象付けた。

  以上が山崎七段解説のすべてではないが私が印象に残ったコメントである。午後7時、ここから休憩をとることなくA級順位戦・三浦vs久保戦の解説に一気に入る。

さて、順位戦の方だが私にとってはこちらの方が興味津津であった。序盤から予断を許さぬ乱戦調であったからである。先手が三浦八段で後手が久保2冠。後手の55歩位取り中飛車に先手の対策が流行の37銀から46銀の急戦策。46銀に対して44銀なら局面は収まるものを後手は54銀と立った。2筋3筋からどうぞと云われりゃ先手も行かない手はない。42分考えて35歩と仕掛けて急戦となった。以下数手はお互いに長考を重ねがら手順がすすみ、第1図が33と金の43への寄りを防いで52にいた飛車が53へひとつ浮いた局面である。横一線に駒が並んだ珍しい形だが、軽サバ流の本領発揮の久保さん独特の手である。
 次に、第2図に至る手順は先手45桂の継ぎ桂から54飛に対して43と金と一つ寄る。次に、53桂成が見えているので、52歩といったんは受けるのかと思いきや、またしても振り飛車はあくまでも軽快に捌くものであると64飛と攻め合いを目指した。
 この第2図の局面で先手の「次の一手」が出題された。候補手が53桂成、次に山崎七段推薦の58金左、その他の手の三択となったが、一番解答が多かったのがまずは詰めろになる53桂成(私もこれ)。正解はその他(78銀)であったが、わずか4名の正解者であった。山崎七段には8時過ぎまで熱心に解説していただいた。この将棋は85手で三浦八段の勝ち。ひいきの久保二冠はこれで二連敗となった。位置も悪いのでなんとかまずは残留をめざして頑張っていただきたいものである。