3月8日に放送されたNHK杯でまさかの「二歩」で勝負が決着したことは将棋フアンなら既に周知のことである。
週刊誌「アサヒ芸能」(3月26日号)でこの件がなんと見開き2ページで大きく記事になっている。
この種の週刊誌で将棋が採り上げられることは異例のことである。野次馬的視点というか、やはり8年ぶりのプロの反則負けということのインパクトが強かったのであろう。
この将棋の収録は2月9日に行なわれた。「禁じ手」決着だったが、対局は成立していたので放送されたという。実際の対局日から1ヶ月後、TVで放送されるやいなや一般紙やスポーツ紙で取り上げられ、当事者たちの想像以上の騒ぎになったというのが真相である。
関西の引退したプロ棋士・神吉宏充七段にコメントが求められている。関東所属の当事者二人なのになぜ関西棋士かと思ったが、神吉さん独特のキャラクターと二人と飲み友達ではないのかなと勝手に想像している。
<二人の心境についての神吉氏のコメント>
神吉:橋本君に電話したら、序盤からミスが続き、非常に局面が苦しくて、何か手を見つけようと焦ったそうです。行方君も戸惑った表情をしていたのは、将棋を作る棋士っていうのは、いい勝負を提供するのが本望。一生懸命指してきた将棋が思わぬ形で終局を迎えてショックだったのでしょう。
<二人とも頭を抱えた時のこと>
行方八段:徐々にペースは握っていましたが、まだ勝ちを確信できるほどではなかった。これで決勝進出していいのかと、無意識に頭を抱えてしまったんです。
<感想戦などについて>
行方八段:二歩の直後はスタジオの空気が凍っていました。それでも結果的に早く対局が終わったので、放送時間の余りを埋めるため、感想戦が行われました。こちらからは二歩の話題に触れたくなかったし、橋本君もしんどかったはず。収録が終わって私が控室に引き返した時には、彼はもう帰っていましたね。
<ふたたび神吉氏のコメント>
神吉:今後、2,3年は『二歩の橋本』として注目される。でも、これで精神的に強くなって、棋士としてプラスに変えてくれると思います。
そのほか記事は記者が橋本八段経営の将棋バーに直撃取材に行ったこと、橋本vs行方戦には1月29日に竜王戦のランキング1組での対局(この将棋は橋本八段が向い飛車の127手で勝利)があって、それが伏線になっていることなどが記載されていた。
そして、結びの言葉が次こそは「Oh〜」と手で頭を抱えるのではなく、「王手」を聞きたいものだ。とある。
しかし、プロ棋士は頭金で詰ますときでさえも「王手」とは言葉を発しないものである。だからといって、どんな表現でまとめればいいのだろう。こんどは私が手で頭を抱え込みそうになってしまった。