ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

菅井新王位誕生

 なべて世の中のことは一色に染まってはいけない。
プロ棋界で圧倒的に居飛車党が幅を利かす中にあって、振り飛車のこれまでの指し方に新たな可能性を求める気概を持った棋士がそれもタイトル戦という晴れの舞台で全局やってのけたというのが驚きを通り越して感動すら覚えるのだ。
 菅井七段といえばプロ入り後、「ごきげん中飛車」「石田流三間飛車」「相振り飛車」という三つの得意戦法を主体に好成績をあげてきたが、それらをことごとく封印しての戦いぶりに観ていてハラハラしながらも、その一手一手に惹きつけられたのである。


 5局を簡単にふりかえってみると、
第1局から第3局までの序盤の駒運びは首尾一貫している。
まず、飛車を早々に三間に振る。次に、自ら角交換をする。そして、向い飛車に振り直すという実にわかりやすい指し回しである。
この三番を2勝1敗でのりきったことが大きかった。
第4局だが、先手の彼は56歩から振り飛車を目指したが、羽生王位は32飛と相振り模様に誘った。7月27日付のブログで相振りも1局ぐらい見てみたいと書いているが、ここでも先手はあえて相振りを避けて28飛と「居飛車vs振り飛車対抗型」に戻したのも驚愕の一手だった。
続いて、最終局の第5局だが後手番の彼は32金から33角と指したので一見、「坂田流向い飛車」かと思ったがここでも32飛だった。この1局は飛金の捌き方が見どころだった。


 羽生王位のターニングポイントは第4局で相振り模様に誘った変化球だったのではないか。羽生さんはこれまで相手の得意戦法をことごとく打ち負かして羽生ワールドを作り出してきた。第1局から第3局の戦法の決着をつけるシリーズになってほしかった気も少しする。


 竜棋会を始めとして、岡山県下の将棋フアンも大喜びであることだろう。早晩、祝賀会が開催されるに違いない。私も竜棋会の一員であるので、できたらその「喜びの輪」に加わりたいものである。