ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

相振りの女王

 第28期女流王位戦第3局が平成29年5月31日に飯塚市で開催された。
大盤解説会は午後3時より「のがみプレジデントホテル」で行われ、解説に豊川孝弘七段、聞き手は室谷由紀女流二段だった。
対局は里見香奈女流王位、挑戦者は伊藤沙恵女流二段である。


 伊藤さんは基本的に居飛車党だが、まれに相手が飛車を振ると相振り飛車に誘導する差し回しを見せる。
これがなかなかうまいもので、女流の相振りはえてして強気の攻め合いが多いものだが、彼女の場合は押したり引いたりの柔軟な指し手で文字通り、手順に独特のサエが散見される。
 本局でも飛車を振った後、しばらく居玉でどう囲うのかとみていると左辺に動いた。やむを得ずそうなったという面もあるが、このあたりがその柔軟性の一端であろう。
 将棋は一触即発の変化を互いに散りばめながら中盤から終盤へと一気に進んだ。見ていて気の置けない戦いというのはこういう将棋をいうのだろう。
 82手目57角成と肉薄するも、先手次の59飛が相手の攻めを緩和するとどめの好手となった。89手で先手の勝ち。これで、里見女流王位は防衛まであと一歩となった。


 伊藤さんは居飛車党なのになぜか相振りだけは好んで指す。そういった棋風がとりわけ気になる人だ。
今回、夢は果たせなくても女流のタイトルに近い人の一人であることに間違いないだろう。
そして、いつの日か「相振り」でタイトルが奪取できた時には<相振りの女王>という称号を贈りたいくらいである。
次局も、相振りの激闘になることを期待し、じっくり見たいものだ。

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