ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

倉敷藤花戦

 第22期倉敷藤花戦は第1局で挑戦者室谷由紀女流二段の先勝を受けて、倉敷市での対局が俄然面白くなってきました。盛り上がるタイトル戦の行方はやはり現地で味わうのが一番と思いました。
 倉敷は7月に詰将棋の全国大会で来ているので、今年2回目の訪問となる。

 まずは11月18日の前夜祭(倉敷アイビースクエア)に行きました。
地元関係者ら約110人が出席。対局者2人の出身地に近い岡山なのでフアンの熱気が伝わってきます。
松田山陽新聞社社長、伊東倉敷市長、谷川連盟会長らの挨拶でスタート。
宴の途中で2人が受けたインタビューでの決意の程は
里見:自分のペースを崩さず、全ての力を出し切って戦いたい。
室谷:一手一手に思いをこめて精一杯指していきたい。
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翌日は第2局の公開対局です。
11月19日午後、場所は倉敷芸文館ホール。別室のアイシアターでは菅井竜也七段による大盤解説会(聞き手は山口絵美菜女流1級)が開かれました。ホールにて緊張感あふれる真剣勝負を観るか、別室での指し手の予想や変化を聞きながら、将棋の内容そのものを理解しようとするか、文字通り身体が二つほしいところです。
 公開対局が始まった最初の30分間は芸文館ホールにいて、その後大盤解説会場の別室アイシアターへ移動した。程なく立ち見も出るほどの満員となり、終局までこの状態が続いた。
 前夜祭の席で菅井七段とお話したとき、彼から「今回の対局はきっと相振り飛車になりますよ。相振りはお好きですか?」と聞かれたので「振り飛車の対抗型以上に相振りは大好きです。未知の分野があるので、指していて楽しいです」というような会話をかわしていた。
 さて、その注目の戦型は先手室谷さんが57銀型四間飛車という現代将棋ではあまり見られない古風な布陣をとった。序盤より積極的な差し回しを見せていたが、後手より56歩〜46角と決められたあたりで形勢を損じたようだ。何回か、19角成を防ぐ手が可能であったようにも思えるが、攻めの手に終始したのが裏目に出てしまったようだ。里見さんのバランスの良い手順に押されて、90手で午後の割と早い時間帯に終局となった。
 公開対局という体験の差もあったかも知れないが、角番でもあったが相手の得意を堂々と居飛車で受けてたった里見さんの貫禄勝ちといったところだろう。
終局後ホールで簡単な感想戦があった。
里見:あまり指したことがない形の将棋で、ずっと難しい展開だと思っていたが、守りの堅さを生かして攻めることができた。
室谷:攻め方をもう少し工夫したほうがよかったかもしれない。
フアンにとって、この倉敷の地でもう1局見れるというのも良しとしたい。私はこの倉敷藤花戦には過去2,3回訪れているが過去最高の人の入りではと感じていたが、この日、主催者発表で約800人の来場者があったそうである。
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 翌20日の最終局(第3局)は公開対局こそ行われなかったものの、大盤解説会はあった。
将棋は戦前より予想されていたものの一つである「相振り飛車」となった。93手目先手の75飛に対して、後手が84玉とかわしてからは、入玉を含みに双方とも秘術を尽くした攻防が続き、実にスリリングであった。
勝負は145手で里見倉敷藤花が勝った。室谷挑戦者は敗れはしたものの里見さんを相手によく健闘されたと思う。今期はタイトルにこそ届かなかったもののその著しい棋力の成長をたたえてあげたいと思う。
 例年、5月に大阪で「森一門会」の祝賀会が開催されるが、室谷さんの活躍はこの催しに花を添えるものになることは間違いないだろう。
最後に、3番勝負の棋譜をふりかえってみます。
里見vs室谷  1.kif 直
室谷vs里見  2.kif 直
里見vs室谷  3.kif 直