ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

週刊誌に登場した新名人

 週刊新潮6月16日号に佐藤天彦新名人の90分間にわたるインタビュー記事が掲載されている。
4ページの特集記事は週刊誌における将棋の登場と云う意味では異例の扱いに感じる。対談もそうだが、すぐれたインタビューを成り立たせるものは、一つには主役の語りの新鮮さ、面白さであり、もう一つは彼の将棋を取り巻く情報の質と量だろう。記者は記事内容以上のものを新名人から引き出したであろうことを90分と云う時間からでも推測できる。


 さて、冒頭にタイトル奪取となった第5局の終盤における80手目、82手目、97手目などの手の解説はややもすると、週刊誌の一般読者には理解が困難かもしれない。しかし、その点、時系列的に揺れ動く対局者心理の描写がうまく捕えられている。


 次に、委曲をつくして語った私生活(タイトル戦の合間の気分転換に活用したという)がひときわ目につく。普通、そういった語りは気恥ずかしさが先に立って十全には披露できないものである。
 和服着用の戦いの場で1日目と2日目に羽織紐の着用を変えてみたこと、番勝負の対局の合間にフアッションの秋冬コレクションに足を運んだこと、趣味のクラシックでいつもは交響曲などのオーケストラ作品を聴くことが多いが、室内楽曲に徹したこと、第3局の2日後に棋士仲間とフットサルに興じたことなどが述べられていた。


 最後に、タイトル奪取後もいまだに自分が名人になれた実感が不思議とないと新名人はのべていた。名人位と云う重さと歴代名人の凄さについて記事の後半において語っている。単なる一過性のタイトル保持者と云うことではなくて、永世名人となった暁にきっと記録と記憶に残る大棋士になっていることだろう。彼はまだ若く、将棋におけるのびしろも持っているに違いない。九州の一将棋フアンとしても期待したい。