ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

将棋界の常識人

 週刊SPA!(10月6日号)に橋本崇載八段のインタビュー記事が掲載されている。
写真入りの4ページ仕立てで、この種の週刊誌としては比較的大きな扱いかと思う。
読んでみて、いささか衝撃を受けたといえば大げさになるかもしれないが、これまで彼に対する漠然としたイメージが根底から覆される思いがしたからである。おそらく一般の将棋フアンも同じ思いに至る方も多いに違いない。


 私にとって、これはという部分を抜粋して紹介しよう。

Q:しばしば、ネットで話題になることについてどう受け止めていますか?
A:本来なら対局で勝って注目を浴びるべきなので、そういう注目のされ方は邪道ですよね。そもそも、目立ちたいという願望はまったくない人間なんです。


Q:対局前のインタビューなどは、ウケようと思って事前に考えるわけですよね。
A:テレビに出た時にフアンサービスをするのって、当たり前のことじゃないですか。何もしないほうがおかしいと思うし、そこは世間と将棋界と僕の感覚の間にズレを感じますね。


Q:将棋界が地味に見られるのが不満ということでしょうか。
A:他のスポーツと比べるとどうしても華がないですよね。羽生さんはもう25年くらいトップに君臨し続けていて、それってものすごいことなんですよ。だけど、僕の二歩のほうがインパクトが強い。そんなね、僕みたいな人間が反則負けしたくらいで騒がれているようじゃダメなんですよ。


Q:「有吉反省会」に出演されたときも、「棋士は天才集団だが、バカと天才は紙一重なんで」と仰っていましたが、そうなんですか?
A:正直、あんまり友達にはなりたくないタイプの人も多くて、将棋界で仲の良い人は数人しかいないです。常識人なのは僕くらいだと思いますよ。自分の中のルールとして、「棋士である前に人であれ」ということはいつも肝に銘じています。


Q:ずいぶんネガティブですね。
A:どんな世界でも、超一流になれるのはストイックでどこかぶっ飛んでいる人ばかり。たとえば、棋士のなかには、将棋以外の囲碁や麻雀、モノポリーなども好きな人が多いんですが、僕は仕事以外ではむしろゲームに触れたくないタイプ。外の空気を吸ってドライブしたり温泉に行ったり、真逆のことがしたいんですよね。


Q:自分はそこまでストイックになれない、ということですか?
A:だって羽生さんなんて、将棋であれだけすごいのに、チェスでも日本有数のトッププレイヤーらしいじゃないですか。天才ってああいう人のことを言うんだなと、ただただ唖然とします。


Q:流行りの戦型はあえて研究しないそうですが、それには何か理由があるんですか?
A:みんな同じ将棋ばかりになってもつまらないのでね。それに、トッププロ同士の戦いって、どうしても渋い駆け引きやセコイ勝ち方になってしまいがちなんですが、僕はなるべくマチュアやフアンの方が観戦していて楽しいと思える華麗なプレイがしたいんです。


Q:連盟の理事選挙に立候補しましたが、これからの将棋界を変えたいとか、ご自身の今後の展望とかはありますか?
A:僕が何をやったところで、将棋界は変わらないですよ。ただ僕の場合、これまでエネルギーを注ぐ場所を少し間違えた気がして・・。これ以上、盤上以外のことで目立ってもしょうがないので、これからはとにかく勝って結果を出すしかないですね。


<まとめの感想>
 いろんなパフォーマンスもフアンサービスの一環だったのですね。目立ちたがりどころか、実は謙虚な人でしたか。棋士の方々の多くが持つ「将棋指しとしての独特の感性」から離れて、できるだけ遠いところにいると云えるからこそ、自らを常識人と位置付けられるのかもしれません。
 ご本人も最後に「お前から将棋を取ったら何が残るんだ」くらい自分を追い込んで頑張るしかないと述べていました。32歳、まだまだこれからですよ。フアンが観戦していて楽しいと思える振り飛車の将棋もたくさん見せていただきたいものです。