ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

情報よりも力勝負を

週刊誌「フライデー」の7月25日号に羽生名人の特集記事がでていた。
3ページ仕立てで、2ページ分がインタビュー記事である。
記事の中心をなすのはコンピュータ将棋に対する羽生名人の考え方である。
読んでみて、新たな羽生語録みたいな感じがしたので、箇条書きにまとめてみた。


*コンピュータに本気で勝つつもりなら、思考のプロセスを学ばないと難しい気がします。人間同士では、相手が手を選んだ考えをある程度分かった上で対局していますが、コンピュータの思考は分からない。棋士は考え込んで消耗します。だから、将棋が強いだけでなく、プログラミングの知識もある人がやるといい。でも、棋士がプログラミングの勉強を始めたら、それもおかしな話です。

*人間が将棋そのものをそれほど深くは分かっていないということはあるんです。いくらプロ棋士が子どもの頃から沢山対局しているといっても、出会った局面は将棋の全体像からすれば1%、いや0.1%にも満たない。残りの莫大な可能性のある局面は見ていない。そこに正しく対応できるかどうかは全く分からない。

*創造性や独創性とは一体何なのか、という究極の問題に突き当たるんです。人間は過去にあったことをアレンジして、今までにない発想をすることが多いですが、コンピュータはゼロから発想する。でも、コンピュータに出来るということは、人間もゼロから創造的なことが出来るかもしれない。いろいろ考えさせられるんです。今、凄く不思議なことが起こり始めているんだなあ、という気がしていますね。

*変な状況だと思うんですよ。将棋のような伝統的な世界でコンピュータというテクノロジーとどう向き合うか考えなければならない時代になっている。電王戦のコンピュータは定跡が少ない。力勝負ですよね。現代将棋は情報が凄く大量で知らないだけで負けることもある。でもこれからは、情報だけの勝負にはあまりならないと思っているんです。全体からすればほんの一部ですから。

*タイトルがいつまでもあるとは思っていないんです。その1回、1局、1手を大切にする気持ちは、今の方が凄く強い。20代の頃は何かを失ってもまだ先があると自然に思えましたけど、さすがに40代になるとそうはいかなくなる。タイトル戦は今回が最後になるかも知れないという気持ちで指しているんです。

<インタビュアのまとめ>
 コンピュータに刺激を受け、自由度の高い勝負(名人戦第4局の41金を例示)に目覚めたことが、最近の強さの要因に思えてならない。また、勝負への執着心を高めている根源には危機感があった。羽生さんは残された時間とも闘っている。と・・・