ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

倉敷藤花戦予選より

2021年3月20日第29期倉敷藤花戦の予選がおこなわれた。

山口稀良莉女流2級vs小野ゆかりアマの一戦。

先手向かい飛車vs後手3間飛車の相振り飛車となった。

相振りはめったにお目にかかれないので貴重な観戦である。

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図は後手が36歩 同歩と一本入れておいて77角成の角交換から再度44角と打ち、先手がこれに55角と合わせた局面である。以下、後手は36飛 37歩に55角 36歩 77角成と攻め収束まであざやかに寄せきった。どうやら先手は55角と合わせた手がよくなかったようである。

今回の詰将棋:17手詰

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なぜ相振り飛車が好きなのか

指し将棋は振り飛車党である。

とりわけ、相振りが好きだ。

振り飛車は振る位置が4種類ある。

中飛車四間飛車、3間飛車、向かい飛車である。

相手も振ると、4×4で16種類の組み合わせとなる。

次ぎに、玉の囲い方をみてみると大きく5種類である。

金無双、美濃囲い、金美濃、右矢倉、穴熊である。

相手も同じように囲うので5×5で25種類の組み合わせとなる。

飛車の振る位置と囲いを組み合わせると途轍もない数字となる。

このことが勢い力将棋、手将棋となり嫌われるようである。

これは定跡が確立しにくい面があることも事実である。

私のような詰将棋創作の世界に遊ぶ者にとってはこのことがたまらない魅力となる。詰将棋創作のある局面でこういった手順が実現したらどうだろうとかいろいろと模索することが相振りの手作りのプロセスに相通じるものがあるからだ。そして、相振りの棋譜並べは先手を持っても、後手を持っても楽しい。これらのことが「金無双」作品作りの原動力になったのも事実である。

今回の詰将棋:19手詰

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女流王位挑戦者決定戦

3月2日、標記の対局が行われた。

伊藤沙恵女流3段vs山根ことみ女流2段の一戦。

戦型は伊藤さんが振り飛車党に対して時折みせる相振り飛車となった。図は40手目後手の山根さんが93銀と上がったところである。

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戦いはこれより本格的となった。一時は先手が2枚飛車が成り込み、入玉模様で指されるなどして先手が優位とみられたが、後手は入玉を阻止する巧みな指し回しで192手で熱戦を制した。山根さんは今期は連勝記録を作るなど好調でその勢いのまま挑戦者となった感がある。里見さんとの対局が楽しみである。両者、振り飛車党なので相振り飛車のシリーズになることを期待している。

今回の詰将棋:17手詰

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ネット配信将棋(その3)

今回、紹介するのは「将棋女子藤田葵チャンネル」である。

振り飛車サポートセンター」というコミカル動画でも注目されている。最近、「将棋ウォーズ」で初段になった女性である。

 彼女はがんじがらめの振り飛車党という点が気に入っている。

少しでも居飛車を指すなら恐らく私はみ向きもしないだろう。

当然、配信動画も振り飛車で相手も振るなら相振り飛車となる。

このサイト、相振り飛車戦が多いのがとりわけ魅力である。

普通、自分より棋力が低い人の将棋をみているとイライラしがちである。

その点、いっしょに考え、特に終盤などはこう指したら詰みがあるのにとか思いながら見ている。

勝っても負けても感想戦をするところがよい。

チャットのコメントも素直に受け入れている。

きっと、向上心が人一倍強い人なのだろう。

今回の詰将棋:21手詰

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詰将棋の解答(2月ブログ分)

2月2日*52馬 同金 73桂打 72玉 52龍 62金 同龍 同玉 54桂 72玉 82金 同玉 81金 72玉 71金 同玉 81金 72玉 61銀 まで19手詰

2月7日*61角 同金 73金 81玉 82金 同銀 61飛成 92玉 82角成 同玉 72金 83玉 81龍 94玉 83銀 84玉 92銀生 94玉 83龍 まで19手詰

2月13日*84桂 71玉 72銀 同金 同桂成 同玉 61銀 同玉 52馬 同玉 42馬 63玉 74金 同玉 75金 63玉 52銀 72玉 63金 71玉 61銀成 同玉 52金寄 71玉 62金寄 まで25手詰

ネット配信将棋(その2)

前回は藤森将棋を紹介したが今回はイトシンTVだ。

伊藤真吾5段のYoutubeである。

彼はデビュ-時は振り飛車党だった。

棋譜を追いかけて秘かに応援していたがいつの日か、振り飛車を封印してしまった。そのころから私の中で棋譜を気にかけない普通の棋士になってしまっていた。

しかし、このたびユーチューバーとして再び注目の人となっている。

 

2月12日の配信が「振り飛車縛り」と題して、全局を振り飛車で指すというものだった。中飛車から向い飛車まで全17局で13勝4敗、うち相振りが4局だった。

将棋をおもしろくたまらない遊戯として遊んでみせるその心意気がよい。それも、公式戦では指さない振り飛車であるが、アマにフアンが多い振り飛車でやってくれたことが素晴らしい。この日の配信もまた私にとって永久保存版となった。

今回の詰将棋:25手詰

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村山聖全局集

マイナビより出版されている「村山聖全局集」上・下巻を入手した。

 この本は一口に述べると、持病と共に子供のころから生き、17歳で4段になり、A級8段まで昇りつめて29歳で生涯を終えた一人の棋士が残した全棋譜の物語である。

 それぞれの本の最初の数ぺーじには「村山聖の声」と題して。彼の自戦記・インタビュー記事などが収録されている。

 読んで良かったと思われるのは次のような記事に遭遇したときである。

<時々自分の存在している意味を考える。自分が死んでも世の中は変わらないし人も変わらない。15歳の時本当に自分の生きている意味が分からなかった。>

<人間は必ず死ぬことが分かった。ならば好きなこと、やりたいことを全部やって死にたいと思った。死ぬときに満足して死ねたら最高だと思った。そして反省はしても後悔はしたくないと思った。自分のやってきたことは終わったことである。今、何をするべきか、何を考えるべきか、それが問題である。>などなど。

 私自身の10代・20代を振り返るに彼のような「死生観」を少なくとも真摯にいだいたことはなかった。おそらく彼は<来年なきを思い、今年に生きる>という覚悟で日々の生活を送ったのであろう。そういったプロ生活12年間で誕生した棋譜の数々である。棋譜の鑑賞は人によって様々である。それは棋力、将棋観などによって異なるからだ。本の表紙の副題には「魂、ここにあり」とある。

これがあながち誇張でないと感じられるように、一局、一局丁寧に棋譜並べをしていきたいと思っている。

今回の詰将棋:19手詰

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