マイナビより出版されている「村山聖全局集」上・下巻を入手した。
この本は一口に述べると、持病と共に子供のころから生き、17歳で4段になり、A級8段まで昇りつめて29歳で生涯を終えた一人の棋士が残した全棋譜の物語である。
それぞれの本の最初の数ぺーじには「村山聖の声」と題して。彼の自戦記・インタビュー記事などが収録されている。
読んで良かったと思われるのは次のような記事に遭遇したときである。
<時々自分の存在している意味を考える。自分が死んでも世の中は変わらないし人も変わらない。15歳の時本当に自分の生きている意味が分からなかった。>
<人間は必ず死ぬことが分かった。ならば好きなこと、やりたいことを全部やって死にたいと思った。死ぬときに満足して死ねたら最高だと思った。そして反省はしても後悔はしたくないと思った。自分のやってきたことは終わったことである。今、何をするべきか、何を考えるべきか、それが問題である。>などなど。
私自身の10代・20代を振り返るに彼のような「死生観」を少なくとも真摯にいだいたことはなかった。おそらく彼は<来年なきを思い、今年に生きる>という覚悟で日々の生活を送ったのであろう。そういったプロ生活12年間で誕生した棋譜の数々である。棋譜の鑑賞は人によって様々である。それは棋力、将棋観などによって異なるからだ。本の表紙の副題には「魂、ここにあり」とある。
これがあながち誇張でないと感じられるように、一局、一局丁寧に棋譜並べをしていきたいと思っている。
今回の詰将棋:19手詰