ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

居飛車党の相振り飛車

 11月11日におこなわれたB2順位戦より井上慶太9段vs戸辺誠7段の一戦である。向い飛車対3間飛車となった。井上9段は本来、居飛車党だがごくまれに振り飛車党に対して相振りを指すことがある。将棋の内容は戸辺7段の攻めをしのいだ後に、反撃に転じた井上9段がその後、おしきって143手で勝利した。

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 途中図は132手目に後手が75歩と指した局面である。ここから先手の持ち駒に桂が3枚あることに注目してほしい。133手目先手は74桂と打ち、金と交換し、再度74桂とおかわりの桂で再び金を入手し、更なる74桂で後手を投了に追い込んでしまった。<桂が金気を駆逐する>といった感じで実に印象深い手順であった。

今回の詰将棋:25手詰

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詰将棋サロンの解説号

将棋世界11月号で自作詰将棋が入選したところであるが、12月号はその作品の解説が記載されてる。

 それによると、手順の解説にとどまらず、次のようなコメントを及川拓馬六段は述べられている。

詰将棋作品集を何冊も上梓されている作者。「詰将棋の道3」は金無双の詰将棋のみが収録されており、その問題数と手順の重厚さが特に印象に残っています。>

 なんらかの手段で拙作品集を入手されたようで、かように詰将棋に理解が深いプロ棋士に忌憚なきご批評をいただいたことに率直に感謝したい。

今回の詰将棋:入選作の再掲です。

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女流王将戦の決着

 10月30日、第42期女流王将戦の第3局がおこなわれ、先手・西山朋佳女流王将が後手・室谷由紀女流3段を相振り飛車の戦いで勝利してタイトルを防衛した。

 報道では先手の逆転の勝利と伝え聞いたが、棋譜を並べて見る限り西山側の玉の囲いが崩壊したわけでもなく、激しい攻め合いの中での決着であった。室谷さんに悪手が悔やまれるほどのタイトル奪取のチャンスがあったに過ぎない。

 二人は大阪では幼馴染の仲である。そのころは2歳年長の室谷さんの方に分があったかもしれない。それは西山さんの「相手が室谷さんと意識せずに戦った」とのコメントにもうかがえる。こういった二人がタイトル戦という晴れの舞台であいまみえたことは実に感慨深いものがあったであろう。

今回の詰将棋:15手詰

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詰将棋の解答(10月ブログ分)

10月1日分*42銀 32玉 41銀生 33玉 45桂 同角 42銀 同玉 51馬 31玉 43桂 同金 32銀成 同玉 41馬 33玉 43銀成 同玉 44金打 まで19手詰

10月2日分*42銀 同金 41金 同金 同と 同玉 42金 同玉 53角 32玉 41銀 22玉 31角成 同玉 32金 まで15手詰

10月4日分*41角 31玉 43桂 同歩 42角 22玉 23金 同金 31角成 33玉 23角成 同玉 32銀 33玉 22馬 同玉 23金 まで17手詰

10月7日分*61銀 82玉 71飛成 同玉 72銀打 82玉 83銀引成 91玉 92歩 71玉 72銀成 同金 同成銀 同玉 73銀成 61玉 53桂 同金 62金 まで19手詰

10月14日*81龍 同玉 63馬 同金左 72金 同金 同歩成 同玉 64桂 同金 73金 81玉 82銀 同角 72金打  92玉 82金入 93玉 92金 同玉 93歩 同玉 71角 92玉 82角成 まで25手詰

10月15日*33桂生 22玉 11角 12玉 22金 同金 同角成 同玉 32金 12玉 21銀 11玉 22金 同玉 32馬 11玉 12銀 同玉 21馬 まで19手詰

10月16日*21銀 22玉 32銀成 同金寄 31飛成 同金 34桂 同歩 33金 同玉 45桂 22玉 31馬 同玉 32金 同玉 33銀 21玉 22金 まで19手詰

10月22日分*42龍 32金 31角 21玉 12角 同香 22歩 11玉 23桂 同金 21歩成 同玉 22角成 同金 31龍 まで15手詰

10月28日分*32銀 13玉 12桂成 同玉 21銀生 同玉 32金 12玉 22金 13玉 24銀 22玉 33銀生 12玉 24桂 13玉 31馬 23玉 22馬 まで19手詰

女流王座戦が開幕

10月28日、第10期女流王座戦5番勝負が開幕した。

西山女流王座に里見4冠が挑戦するタイトル戦である。

注目の戦型は先手の里見さんが58飛と早々に中飛車をめざしたが後手の西山さんが同じく52飛車と中飛車で応じたためほどなくして、28飛ともどしてよくある対抗型に落ち着いた。

途中図は後手が62手目に55歩と合わせて55銀と進出した手に先手は56歩と指したが後手はこの手に対して36歩(66手目)と指し違いに出た局面である。

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この後、後手から79角の両取りがあり後手が指しやすくなったようだ。以下、124手で後手が勝利した。

里見さんの序盤作戦がいささか、ちぐはくのように感じられた。相手は振り飛車で来ることはわかりきっているのだから相振りにするならする、対抗型で戦うなら戦うで鮮明にした方がよいのではないだろうか。その辺の迷いが玉の囲いにあらわれていた。第2局以降も熱戦を期待したい。

今回の詰将棋:19手詰(手数のわりに易しい)

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永遠の桑原流

 私の詰将棋作家への水先案内人は故・桑原辰雄氏であった。

早いもので彼の死後、5年が経過する。

10月22日は彼の命日である。

 趣味の世界で特にオマージュ的思いのある人との別れは一種独特の淋しさを伴うものである。

昭和55年、作家・立原正秋氏の訃報に接したときも同様の思いがした。加えて、その時54歳の若さにも驚くと共に<これから彼の新しい作品に接することはできないのだな>との淋しさを感じたものである。

二人が残した作品の数々は私にとって文芸及び詰将棋の世界への指針・指標となっている。

今回の詰将棋:15手詰(桑原辰雄氏作)昭和43年5月号・詰パラ表紙作品

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三間飛車ばかりではない

10月15日、79期C2順位戦5回戦がおこなわれた。

先手・石田直裕5段vs後手・山本博志4段の一戦より。

戦型は後手のゴキゲン中飛車となった。

山本4段といえば3間飛車、3間飛車といえば山本4段を思い浮かべるくらいだ。その彼が中飛車とは初めて見るなと思っていたら、彼がツイッターでつぶやいた。「ゴキゲン中飛車は三段の頃からずっと研究していて、いつかは登板させたかった。研究仲間でゴキゲン中飛車の師匠である奨励会員に・・・」とある。

 途中図は先手が23手目に77銀とあがったところである。

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この後、後手は56歩と交換して飛車の捌きにでる。以下、細い攻めをつないで104手で勝利した。彼のつぶやきの中で気になったのは奨励会員のこと。一般人は日頃彼らがどんな将棋を指すのか、棋譜を知る由もないので分からない。少なくとも3段リーグでしのぎを削る人の実力の一端を再認識するエピソードではある。

今回の詰将棋:19手詰

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