ストンリバーの日記

「詰将棋パラダイス」同人作家が語る将棋一般ブログ

三間飛車ばかりではない

10月15日、79期C2順位戦5回戦がおこなわれた。

先手・石田直裕5段vs後手・山本博志4段の一戦より。

戦型は後手のゴキゲン中飛車となった。

山本4段といえば3間飛車、3間飛車といえば山本4段を思い浮かべるくらいだ。その彼が中飛車とは初めて見るなと思っていたら、彼がツイッターでつぶやいた。「ゴキゲン中飛車は三段の頃からずっと研究していて、いつかは登板させたかった。研究仲間でゴキゲン中飛車の師匠である奨励会員に・・・」とある。

 途中図は先手が23手目に77銀とあがったところである。

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この後、後手は56歩と交換して飛車の捌きにでる。以下、細い攻めをつないで104手で勝利した。彼のつぶやきの中で気になったのは奨励会員のこと。一般人は日頃彼らがどんな将棋を指すのか、棋譜を知る由もないので分からない。少なくとも3段リーグでしのぎを削る人の実力の一端を再認識するエピソードではある。

今回の詰将棋:19手詰

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遠いタイトル

10月14日に第68期王座戦第5局がおこなわれた。

残念ながら久保9段は敗れタイトル奪取はならなかった。

彼にとっては3度目の王座戦挑戦だった。49期と55期ではいずれも羽生王座に跳ね返されていた。

 久保9段の直近の可能性はベスト8まで勝ち進んでいる棋王戦だ。この可能性を除けば向こう半年以上はタイトル戦で振り飛車が見られることはないだろう。実に淋しいことだ。

 最近、大山vs升田全局集(174局)の棋譜並べをした。

昭和40年代以降の対戦はほとんどが振り飛車対抗型だった。大山が振れば升田が居飛車、升田が振れば大山が居飛車。私はこの時代の振り飛車に魅せられて将棋を指すようになった。この両巨頭、今にして思えば<フアンあっての将棋界>と一番、考えてくれていたのではないだろうか。この二人がリードしてくれた振り飛車興隆期がちょっぴり懐かしい。

今回の詰将棋:19手詰

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女流王将戦第2局

 10月13日に第42期女流王将戦第2局がおこなわれた。

先手・室谷由紀女流3段vs後手・西山朋佳女流王将の一戦。

戦型は互いに3間に振る相振り飛車となった。

囲いは美濃vs右矢倉である。

途中図は先手が45手目77桂とはねて、局面の頂点を迎えた。

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後手が46手目55歩と突いて本格的な戦いが始まった。

先手は71手目飛車を見切って64歩と突きだすなど終始、手がよく伸びている印象がある。強気の攻め合いが功を奏し115手で勝利した。

 室谷さんは先日のマイナビ女子オープン一斉予選ではあっさり予選落ちするなど強いのか弱いのかよく分からないところがある。それとも大勝負に強い一発屋タイプなのか。それにしても西山さんのスランプも気になるところだ。第3局は好局の相振りを期待する。

今回の詰将棋:25手詰

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本領発揮の粘りのアーティスト

10月6日に第68期王座戦第4局が行われた。

アベマで中継がおこなわれ、解説に菅井8段、今泉5段、室谷由紀女流3段など振り飛車に精通した人が登場し、解説も話題も実にわかりやすく面白かった。

さて、将棋の方は先手久保9段のノーマル4間飛車で始まったが200手を超える大熱戦となった。終盤押され気味となった先手は実によく粘り強い指し回しをみせて逆転勝ちとなった。今年、久保さんの将棋を観てきた中で最高の一局だと私は思う。

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途中図は134手目後手の永瀬王座が68角と打った局面である。ここから先手は45龍と歩頭に出た。その後、171手目の46桂、175手目の28金、185手目の18銀などが印象深い好手だったと思う。最終局にもつれ込んだタイトル戦だが次も熱戦を期待したい。

今回の詰将棋:19手詰

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「将棋世界」の詰将棋サロン

 2020年11月号の同誌で実に久しぶりに入選を果たした。

入選6回となっているが、前回がいつの出来事だったか思い出せないほどだ。多分10年以上は経過しているはずだ。

 私の主戦場は詰将棋パラダイス誌上だ。20手超えの中編作が多く、17手以内の将棋世界向けの作品がなかなかできないことにもよる。今回の作品はギリギリ将世向きだなと思い投稿して、入選を果たしたので素直に喜びたい。

今回の詰将棋:将世11月号第7問

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どう指したら、こうなるのか

10月1日は倉敷籐花戦の挑戦者決定戦だったので、A級対局(先手・斎藤慎太郎8段vs後手・羽生善治9段)の一戦をほったらかしにしていた。どうせこの二人なら振り飛車戦にならないだろうと高をくくっていた。午後2時頃にアベマTVを確認して思わずのけぞりそうになった。互いに向い飛車で角はそれぞれ筋違い角を打っていた。途中図は49手目16歩と指したところである。

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ひねり飛車なら先手が特に振り飛車模様になるが、この相振り模様の姿は<どう指したらこうなるのか>と一瞬考え込んでしまった。解説を聞いていると、どうやら相横歩取りで歩がきれた筋に互いの飛車が廻ったようだ。まれにあるらしい。将棋は111手で先手が勝った。ところで、倉敷籐花戦の方は石本さんが負けてしまった。振り飛車党の彼女を大舞台で見たかったが仕方がない。

今回の詰将棋:15手詰(金銀の打ち方に注意)

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銀不成のマジック

9月30日に行われた第69期王座戦一次予選の先手・小林健二9段vs後手・安用寺孝功6段の一戦。

後手のごきげん中飛車で始まった戦いでの途中図は86手目46銀と指したところである。

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 この後、この銀が他の着手も交えながら37銀生~38銀生~47銀生~58銀生~69銀生と都合5回も銀の不成を繰り返しながら最後は69銀不成が相手玉を寄せるのに一役買って122手で後手が勝利した。さながら銀不成のマジックショーを見ている感じだった。銀の不成がたくさん出てくる詰将棋を作ってみたいものだとちょっぴり思った。

今回の詰将棋:19手詰(銀の不成は1回しか現れません)

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